設備BIMをRevitで進めようとしたとき、最初に名前を見るのがRUG、つまりRevit User Group Japanです。RUGが公開している「設備BIMテンプレートとファミリ」は、国内の設備設計でRevitを使ううえで事実上の標準となっており、ここを押さえるとスタートダッシュの効率が大きく変わります。とりわけ、ファミリにシェアパラメータが整理された状態で提供されているため、「集計・タグが最初から効く土台」が手に入るのが大きな利点です。本記事では、RUG基準ファミリとシェアパラメータの中身、使いどころ、そしてカスタマイズの進め方を実務目線で整理します。
RUGとは何か
RUGは、Revitを使う設計・施工のプロフェッショナルが集まるユーザーコミュニティです。国内でRevitを検討し始めると、「何をベースにテンプレートを作ればいいか」というスタート地点で迷うケースが多いため、RUGが設備分野でテンプレートとファミリを整えて公開しています。
ポイントは、これが一企業の独自仕様ではなく、複数の実務者の知見を持ち寄って作られた「共通のたたき台」であることです。そのため、社外とデータをやり取りするときにもベースが揃いやすく、「とりあえずRUGに揃えておけば話が通じやすい」という共通語的な価値も生まれます。
RUG基準ファミリの中身
RUG基準ファミリは、国内の設備設計実務で頻度高く使われる設備オブジェクトをカバーしています。空調ならダクトのチーズ、ディフューザー、VAV、空調機。衛生なら排水管のチーズ、トラップ、厨房器具。電気なら照明器具、コンセント、ケーブルラック。主要なオブジェクトは一通り揃っています。
重要なのは、これらのファミリに「シェアパラメータ」が一貫した規則で設定されていることです。シェアパラメータは複数のファミリやプロジェクトをまたいで共通利用できるパラメータで、集計表への拾い出しやタグ表示に使うためには不可欠です。RUG基準では、このシェアパラメータが各ファミリに同じ定義で仕込まれているため、集計やタグがきちんと取れる状態で提供されています。ファミリを集めるだけでなく、「集計に使える状態で揃っている」という点が、RUG基準の大きな価値です。
RUGテンプレートの使いどころ
RUGはテンプレートも公開していて、ビュー設定、システムタイプ、タグ、凡例、表示設定が一通り詰められた状態で提供されています。「何から始めたらいいか分からない」という事務所にとっては、ゼロから組むよりも、これをベースにした方が圧倒的に効率的です。
特に、システムタイプとタグ、シェアパラメータが互いに整合した状態でセットになっている点が重要です。バラバラに集めたファミリとテンプレートだと、タグが拾うパラメータとファミリ側のパラメータがかみ合わず、「タグに何も出ない」といったつまずきが起きがちですが、RUG基準はそこがあらかじめ揃っているため、導入直後のつまずきが少なく済みます。
そのまま使う際の注意点
ただし、RUG基準をそのまま使えば完成、というわけではありません。主に二つの調整が必要です。
事務所ごとの設計ルールとのすり合わせ:RUG基準は「標準的なスタイル」であって、それが自社の作図ルールと一致するとは限りません。「タグの見せ方が自社スタイルと違う」「器具の色分け規則が違う」といった違いは必ず出てきます。まずはその差分を洗い出すところから始めます。
メーカー提供ファミリとのすり合わせ:RUG基準は汎用的なファミリであり、実際の製品ファミリとシェアパラメータが一致しないことがあります。実際に使うファミリを選定し、それらを社内のシェアパラメータに紐づける作業が必要です。
いずれも、RUGを「そのまま使う」のではなく「自社の出発点として使う」という姿勢で向き合うと、導入後の違和感が減ります。
シェアパラメータの一元管理
RUG基準のシェアパラメータファイル(.txt)を社内で一元管理し、すべてのファミリをこのシェアパラメータに紐づける、という運用にするとトラブルが減ります。ここを社内でバラつかせてしまうと、集計が取れない、タグ表示がバラつく、といったトラブルが頻発します。
シェアパラメータは「名前」ではなく、内部に持つ一意のID(GUID)で同一性が判定されます。つまり、同じ「型番」という名前でも、別々に作ったパラメータは別物扱いになり、集計で列がそろいません。だからこそ、「全員が同じファイルから読み込んで使う」ことが大前提です。RUGのファイルをそのまま社内標準として採用し、追加分だけを同じファイルに追記していくと、整合性を保ちやすくなります。
カスタマイズの進め方
RUG基準をベースに、社内レイヤーを追加していく進め方が現実的です。たとえば、RUG基準のVAVファミリに、社内で頻度高く使うメーカーの型番や品番パラメータを追加する、といった進め方です。RUG基準を一から作り直すのではなく、「上書きして育てる」イメージです。
このときコツになるのが、「RUG由来の部分」と「社内で追加した部分」を区別できるようにしておくことです。追加パラメータに社内接頭辞を付ける、グループを分けるなどの工夫をしておくと、RUGがアップデートされたときにも、どこを改めて、どこを残すべきかが明確になり、追従しやすくなります。
まとめ:ゼロから作らず、ベースにする
RUG基準ファミリとシェアパラメータは、設備BIMを始める際の生産性を大きく上げるリソースです。事務所ごとのカスタマイズは必要だとしても、ゼロから作るよりもRUGをベースにした方が近道です。まずRUGを取り込み、シェアパラメータを一元管理し、RUG由来と社内追加を区別しながら社内レイヤーを重ねていく。この順番が、中小事務所では最も現実的です。
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



