設備設計ナレッジ

排水ポンプと湧水処理の設計|ポンプ容量・排水槽・湧水ピットの計画ポイント

排水ポンプと湧水処理の設計手法を徹底解説。汚水ポンプ・雑排水ポンプの使い分け、ポンプ容量の決定方法、排水槽(ピット)の容量計算、湧水ピットの設計、水位警報装置の設置まで、建築設備設計の実務ポイントを網羅的に紹介します。

排水ポンプと湧水処理の設計|ポンプ容量・排水槽・湧水ピットの計画ポイント
plumbing
公開日
2026年4月10日
更新日
2026年4月11日

排水ポンプとは?地下階排水で必要になる理由

建築物の排水は、原則として自然流下(重力式)によって下水本管まで導きます。しかし、地下階のように下水本管よりも低い位置にある排水は、自然流下では排出できません。このような場合に、排水を機械的に汲み上げて排出するのが排水ポンプです。

排水ポンプが必要となる代表的なケースは以下のとおりです。

  • 地下階のトイレ・厨房・洗面所などからの汚水・雑排水
  • 地下駐車場の洗浄排水・雨水流入
  • 地下水(湧水)が建物の地下躯体に浸入した場合の排水
  • 外部排水桝までの距離が長く、十分な勾配が確保できない場合

排水ポンプの種類と使い分け

排水ポンプは、排水の種類に応じて適切に使い分ける必要があります。原則として、汚水ポンプと雑排水ポンプは分離して設置します。これは衛生上の理由と、排水の性状に合ったポンプ仕様を選定するためです。

汚水ポンプ

トイレからのし尿を含む排水を処理するポンプです。固形物を含むため、口径50mm以上のノンクロッグ型(非閉塞型)を選定するのが一般的です。汚水槽は密閉構造とし、臭気対策として脱臭装置の設置が求められます。

雑排水ポンプ

洗面器・流し・浴槽などからの排水を処理します。汚水に比べ固形物は少ないものの、油脂分を含む厨房排水がある場合は、グリース阻集器(グリーストラップ)を排水槽の上流側に設置し、油脂がポンプに流入しないようにします。

湧水排水ポンプ

地下水(湧水)の排出に使用するポンプです。湧水は比較的きれいな水が多いため、汚水・雑排水用とは別系統で計画します。湧水の排水先は、汚水系統ではなく雨水系統または雑排水系統に接続するのが一般的です(自治体の条例により異なる場合があります)。

排水ポンプの台数と運転方式

排水ポンプは信頼性確保のため、予備機を含め2台以上を設置し、交互運転とするのが原則です。交互運転とすることで、1台が故障しても排水機能を維持でき、ポンプの摩耗を均等化して寿命を延ばす効果もあります。

大規模建物や重要度の高い建物では、3台設置(常用2台+予備1台)とし、排水量が多い場合は並列運転を行うこともあります。

ポンプ容量の決定方法

排水ポンプの容量(吐出し量)は、以下の要素から決定します。

吐出し量の算定

ポンプの吐出し量は、時間最大排水量以上とするのが基本です。排水量は、接続される衛生器具の排水負荷単位から瞬時最大排水量を算出するか、建物用途に応じた使用水量の実績データから推定します。一般的には、ポンプ1台の吐出し量は時間最大排水量の1.0〜1.5倍程度とします。

全揚程の算定

ポンプの全揚程は、以下の合計で求めます。

  • 実揚程:排水槽の最低水位から吐出し先までの垂直高さ
  • 管路の摩擦損失:吐出し管の直管部・継手・弁類による摩擦損失の合計
  • 吐出し口の残圧:吐出し管先端で必要な圧力(通常は大気開放のため0に近い)

排水槽(排水ピット)の設計

排水槽は、排水を一時的に貯留してポンプで排出するための槽です。排水槽の設計では、有効容量、ポンプの始動頻度、槽の構造の3点が特に重要です。

有効容量の決定

排水槽の有効容量は、ポンプの始動頻度(1時間あたりの起動回数)と排水流入量から算出します。ポンプの始動頻度が高すぎるとモーターの過熱や寿命低下を招き、低すぎると排水の滞留時間が長くなり腐敗・悪臭の原因となります。一般的には1時間あたり6〜10回程度の始動頻度を目安に有効容量を決定します。

排水槽の構造上の注意点

排水槽を設計する際の構造上の主なポイントは以下のとおりです。

  • 汚水槽は密閉構造とし、臭気の漏洩を防止する
  • 槽底部にはポンプ吸込み側に向かって勾配を設け、汚泥の堆積を防ぐ
  • 清掃・点検用のマンホール(600mm角以上)を設置する
  • 通気管を設け、槽内の換気と圧力調整を行う
  • 排水の滞留時間が長くなりすぎないよう、過大な容量は避ける

湧水処理とは?地下水位が高い地域での対応

湧水処理とは、地下水が建物の地下躯体を通じて浸入した水(湧水)を集めて排出する処理のことです。建物の防水工事を適切に施工しても、経年劣化やコンクリートの微細なひび割れから地下水が浸入する可能性があるため、湧水処理の計画は不可欠です。

特に以下のような地域・条件では、湧水処理設備の重要性が高まります。

  • 地下水位が建物の基礎底盤よりも高い地域
  • 河川や海に近い低地に建設される建物
  • 地下階が2層以上ある深い建物
  • 降雨時に地下水位が上昇しやすい地盤条件の地域

湧水ピットの設計ポイント

湧水ピットは、地下階の床下に設ける集水用のピットです。湧水ピットの設計では、以下の点を考慮します。

排水溝と集水の計画

地下階の床下(土間コンクリート下)に排水溝(暗渠)を設け、浸入した湧水を湧水ピットに導く計画とします。排水溝は砂利を充填した溝とし、建物の外周部や柱周りなど、特に湧水が発生しやすい箇所に沿って配置するのが効果的です。排水溝の勾配は湧水ピットに向かって確保し、水がスムーズに集まるようにします。

湧水ピットの容量と位置

湧水ピットの容量は、想定される湧水量とポンプの排水能力から決定します。湧水量は地質調査の結果(透水係数など)や、近隣建物の実績データを参考に推定します。ピットの位置は、建物の最も低い場所やエレベーターピット付近など、湧水が集まりやすい場所に計画します。

水位警報装置と安全対策

排水ポンプが故障した場合や、想定以上の排水が流入した場合に備え、水位警報装置の設置は極めて重要です。水位警報装置は、排水槽や湧水ピット内の水位が異常に上昇した場合に、中央監視盤や管理室に警報を発報するシステムです。

一般的な水位制御のレベル設定は以下のとおりです。

  1. ポンプ停止水位(LWL):水位が下がりポンプを停止させるレベル
  2. ポンプ起動水位(HWL):水位が上昇しポンプを起動させるレベル
  3. 警報水位(ALM):異常水位に達し警報を発報するレベル(ポンプ故障や排水量超過を示す)

水位検知には、フロートスイッチや電極棒方式が広く使用されています。特に汚水槽では、固形物によるフロートの動作不良に注意が必要です。

排水ポンプの保守管理のポイント

排水ポンプは設置後の保守管理が長期的な信頼性に直結します。設計段階から以下の保守管理のしやすさを考慮することが重要です。

  • ポンプの引き上げ・搬出が可能なスペースとルートの確保
  • 排水槽内の定期清掃(汚水槽は年2回以上が建築物衛生法で義務付け)
  • ポンプの運転状態(電流値・振動・異音)の定期点検
  • 水位検知器(フロートスイッチ等)の動作確認
  • 逆止弁・仕切弁の動作確認と必要に応じた交換

まとめ

排水ポンプと湧水処理は、地下階を持つ建築物において不可欠な設備です。設計のポイントを改めて整理すると、以下のようになります。

  • 汚水ポンプ・雑排水ポンプ・湧水ポンプは排水の種類に応じて分離設置する
  • ポンプは予備機を含め2台以上とし交互運転で信頼性を確保する
  • ポンプ容量は時間最大排水量と全揚程から決定する
  • 排水槽の有効容量はポンプの始動頻度(6〜10回/h)から算出する
  • 湧水ピットは床下排水溝と組み合わせ、地下水を確実に集水・排出する
  • 水位警報装置を設置し、ポンプ故障や異常水位に速やかに対応できるようにする

地下水位の高い地域では、地質調査の段階から設備設計者が参画し、湧水量の推定と排水計画を早期に検討することが、トラブルのない地下階排水を実現するための鍵となります。

SUPERVISOR

監修者

長谷川一夫

機械設備設計部

パラダイム部長

関連記事

あわせて読む

同じポータル内のほかの記事です。

plumbing

雨水排水と敷地排水の設計|降雨強度・管径決定・ルーフドレン・雨水貯留の実務ポイント

雨水排水と敷地排水の設計手法を徹底解説。降雨強度の設定、雨水立管・横管の管径決定、ルーフドレンの選定と配置、敷地排水の勾配計画、側溝・集水桝・雨水桝の設計、雨水貯留槽・浸透施設の計画まで、建築設備設計の実務ポイントを網羅的に紹介します。

記事を読む2026年4月11日
plumbing

給排水設備設計の「あるある失敗」8選|原因・影響・対策を設計段階別に解説

給排水設備設計でよくある失敗事例8選を原因・影響・対策のセットで解説。受水槽過大容量、排水勾配不足、グリストラップ容量不足、通気管スペース未確保、ウォーターハンマー、防火区画貫通処理漏れ、六面点検スペース不足、排水桝配置不足の見落としを防ぐ設計段階別チェックリスト付き。

記事を読む2026年4月8日
plumbing

配管設備の建基法チェックポイント|令129条の2の5・防火区画貫通処理・耐震支持・クロスコネクション防止の実務ポイント

配管設備の建基法チェックポイントを徹底解説。令129条の2の5の技術基準の概要、配管材質別(不燃管・樹脂管)の防火区画貫通処理の具体的な工法(熱膨張パテ・認定工法)、よくある指摘事項、配管支持・耐震対策(フレキシブルジョイント・振れ止め支持)、クロスコネクション防止・逆流防止の要件、配管とダクトの貫通処理の違い、設計チェックリストまで、建築設備設計の実務ポイントを網羅的に紹介します。

記事を読む2026年4月3日