地下階など自然流下で放流できない排水は、排水槽に集めてポンプで排出します。設計では流入量、ポンプの実際の吐出し量、運転水位の幅を一緒に決める必要があります。ポンプを大きくするだけでは、頻繁な起動や槽内の滞留、故障時の溢水を防げません。
汚水・雑排水・湧水で選定条件が変わる
排水の種類 | 先に確認する条件 |
|---|---|
汚水 | 固形物の通過性、閉塞対策、臭気、排水槽の清掃方法 |
雑排水 | 油脂・毛髪・温度・薬品、阻集器の要否 |
湧水 | 地盤・季節による変動、連続流入、土砂、停電時の対応 |
雨水 | 設計降雨、集水面積、急激な流入、屋外放流条件 |
湧水量は建物面積だけでは決められません。地盤調査、施工中の実測、地下水位、止水計画を確認し、通常時と増水時を分けて設定します。雨水は雨水・敷地排水の設計で集水条件から算定します。
ポンプの全揚程と運転点を決める
開放槽から高い位置へ排水する場合、必要な全揚程は実揚程と配管・継手・弁類などの損失を基本に求め、吐出先の圧力条件も確認します。実揚程は図面の階高そのものではなく、吸込側と吐出側の基準水位から計算します。
仮に実揚程5m、流量150L/minでの配管等の損失3mなら、必要全揚程は8mです。ポンプ性能曲線と系統抵抗から、この条件で150L/minを排出できるか確認します。銘板の最大流量と最大揚程を同時に実現できるわけではありません。考え方はポンプの選定と揚程計算を参照してください。
有効容量300Lの運転周期を計算する
一定流入60L/min、運転時の吐出し量150L/min、停止水位から始動水位までの有効容量300Lと仮定します。1台のポンプが定流量で動く単純なモデルです。
項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
停止中に水がたまる時間 | 300÷60 | 5分 |
運転中に水位が下がる時間 | 300÷(150−60) | 約3.33分 |
1周期 | 5+3.33 | 約8.33分 |
1時間の始動回数 | 60÷8.33 | 約7.2回 |
排水中も流入が続くため、300÷150=2分とはなりません。許容始動回数や最低運転時間は、モータ容量や製品によって異なります。この例の7.2回/hを合格基準にはせず、採用機器の取扱説明書と照合します。
同じ単純モデルでは、流入がポンプ吐出し量の半分となるときに始動頻度が最大となります。この例では75L/minの流入で7.5回/hです。設計最大流入だけでなく、日常的な流入でも頻繁な起動が起きないか確認します。
水位設定と警報後の余裕を見える化する
槽の有効平面積が1.5m²で、始動・停止間の有効容量を0.30m³とするなら、水位差は0.30÷1.5=0.20mです。底部の堆積物、ポンプ本体の占有、槽形状などは別途考慮します。
水位・領域 | 確認する役割 |
|---|---|
停止水位 | 最低運転水位・冷却・空運転防止を満たす |
通常始動水位 | 有効容量と始動頻度を確保する |
予備機始動水位 | 採用する制御方式に応じて増水に対応する |
高水位警報 | 異常を管理者へ知らせる |
警報から溢水まで | 対応時間を確保するための余裕容量 |
ポンプ故障時に、警報から溢水まで300Lの余裕があり、60L/minが流入し続けるなら、猶予は5分です。十分かどうかは常駐・遠隔通知・駆付け時間で変わります。警報盤を付けるだけでなく、誰が何分で対応するかまで決めます。
2台設置・停電・維持管理の確認
2台設置でも、1台予備の交互運転と、2台同時運転で必要流量を満たす計画は異なります。1台故障時の能力、逆止弁・仕切弁、警報、共通電源の停止リスクを整理してください。汚水槽では過大容量による長期滞留も避け、通気・清掃・搬出の作業性を確保します。
- 停止・始動・警報水位を断面図と制御図に共通表示する。
- ポンプを引き上げる開口と作業空間を確保する。
- 通気口、排水管、点検口の配置を建築図と照合する。
- 停電時の流入継続時間と、非常電源・貯留の役割を整理する。
給排水設計のレビュー項目と併せて、流量計算・水位図・制御説明を一式で確認しましょう。
参考:荏原製作所「DS形ポンプ取扱説明書」。製品ごとの水位・始動頻度・使用液条件を確認するための資料です。上記の計算値は特定機種の仕様ではありません。
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



