空調の省エネ設計は、高効率な熱源機を選ぶだけでは完結しません。建物の負荷、運転時間、外気量、ファン・ポンプの動力、制御を組み合わせて評価します。BEIを改善するときは、まず計算結果の内訳から、どこでエネルギーを使っているかを把握しましょう。
本記事は空調仕様を検討する実務手順を扱います。2026年の用途・規模別の適合基準は非住宅の省エネ基準とBEIで確認してください。
BEI・PAL*・ZEBの役割を整理する
指標・制度 | 見る対象 | 空調設計での使い方 |
|---|---|---|
BEI | 基準に対する一次エネルギー消費量 | 建物全体の適合と、設備仕様変更による影響を確認 |
PAL* | 非住宅の外皮に関わる年間熱負荷 | 窓・日射遮蔽・断熱等の検討を意匠設計と共有 |
ZEB評価 | 省エネと再生可能エネルギーによる削減 | 法適合とは別に、目指す区分と評価条件を設定 |
非住宅の省エネ適合基準は一次エネルギー消費量を中心に評価します。PAL*を把握することは有用ですが、「すべての非住宅がPAL*とBEIの両方で法適合を判定する」と一括りにはしません。住宅と非住宅、適合基準と誘導基準を分けて確認します。国交省・改正建築物省エネ法オンライン講座FAQ
1.負荷と運転条件をそろえる
室用途、在室人数、使用時間、室内設定、外気条件、外皮仕様を整理します。空調負荷計算と省エネ計算で条件がずれていると、能力の過不足や入力の不整合が生じます。設計用の最大負荷と年間のエネルギー評価は目的が異なるため、それぞれの条件を明記してください。
例えば会議室と常時使用する執務室では、負荷変動と運転時間が異なります。ひとつの系統へまとめた場合の運転範囲、個別停止の可否、外気供給の扱いを確認します。過剰な余裕を何段階も重ねず、余裕を見込んだ箇所と理由を計算書に残します。
2.熱源は定格効率と運転の両方を見る
機器の定格COPだけでは、年間の使用エネルギーを比較できません。温度条件、部分負荷、台数分割、最低運転容量、冷暖房同時要求、補機動力を確認します。カタログの異なる試験条件の数値を、そのまま優劣比較に使わないことが大切です。
方式比較では「同じ負荷・運転条件」にそろえて、初期費用、必要面積、保守、更新、一次エネルギーを並べます。熱源単体の効率が上がっても、搬送や補機を含む全体で改善しているとは限りません。
3.ファン・ポンプの搬送動力を確認する
ダクトや配管の経路、機器の抵抗、設定流量が搬送動力に影響します。必要な風量・流量を確定したうえで、過大な抵抗や絞りによる調整を減らせないか検討します。インバーターを採用する場合は、最低風量・最低流量、換気・衛生条件、機器の運転可能範囲も照合します。
ポンプの流量・揚程・制御の検討はポンプ揚程の計算と選定を参照してください。回転数制御の理論上の削減率を、設備全体の実測削減率として表現しないよう注意します。
4.外気処理は換気の必要条件から検討する
外気負荷の低減では、必要換気量を確保したうえで、熱回収、外気冷房、デマンド制御等を検討します。CO₂濃度に連動する制御でも、法令上必要な換気や汚染物質の排出まで省略できるわけではありません。
全熱交換器を使う場合は、交換効率とファン動力、給排気バランス、漏れ、臭気、結露、保守を合わせて評価します。空調機の外気処理能力や除湿も含めた選定は全熱交換器と外気処理の選定で整理しています。
改善案を比較する表の作り方
改善案 | 先に確認する条件 | 再確認する項目 |
|---|---|---|
熱源を高効率機へ変更 | 評価条件・能力・部分負荷 | 電源、機器表、入力値、補機 |
変風量・変流量制御 | 負荷変動、最低風量・流量 | 制御仕様、センサー、運転範囲 |
全熱交換器を採用 | 給排気経路、排気の性質 | 回収効果、ファン動力、清掃動線 |
ゾーニングを見直す | 室用途・運転時間・方位 | 系統区分、室制御、同時運転 |
計算例として、評価対象の基準一次エネルギーを1,000、変更前の設計値を820、変更後を780と仮定すると、比は0.82から0.78になります。これは比較の考え方を示す例で、特定の対策による削減効果の保証ではありません。複数案は同じ入力条件で再計算し、変更した条件を記録します。
ZEBの目標は評価条件とセットで決める
ZEB Readyは、再生可能エネルギーを除く削減率50%以上が基本です。Nearly ZEBや『ZEB』は、その省エネに加えて再生可能エネルギーを含む削減条件を満たす区分です。ZEB Orientedは規模・用途別削減率・未評価技術の条件があるため、床面積だけで区分しません。環境省「ZEBの定義」
計画初期に「法適合」「ZEBのどの区分」「表示・認証の取得」をそれぞれ決めます。表示制度の星の数は制度・時期によって扱いが異なるため、旧制度の星とBEIの対応表を流用しないでください。国交省・省エネ性能表示の解説
計算書・図面・機器仕様をそろえて完了する
提出前には系統名、能力、入力、効率、制御、外気量を照合し、資料の版を記録します。施工段階の代替機種や運転方式の変更も再確認の対象です。計算で採用した省エネ機能が、図面・仕様書・試運転項目に反映されて初めて設計としてつながります。
方式比較や入力条件の整理が必要な場合は、機器表と省エネ計算結果の内訳をそろえてご相談ください。空調設備の設計について相談する
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



