近年、建設業の倒産は增加傾向にあり、背景には資材高騰や人手不足、資金繰りの悪化など複数の要因があります。近年は4年連続で倒産件数が增え、過去10年で最多水準となる年も出るなど、業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。本記事では、倒産が增えている原因と最新の動向を整理し、生き残るための対策を解説します。なお、具体的な件数や統計は年によって変動するため、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの最新データの確認を前提としてお読みください。
建設業の倒産が增えている背景
建設業の倒産增加は、一つの原因ではなく、複数の構造的な要因が重なって起きています。中でも影響が大きいのが次の三つです。
資材価格の高騰と価格転嫁の遅れ
鉄骨や木材、住設機器などの資材価格が高止まりしている一方で、上昇したコストを請負単価に十分に転嫁できないケースが目立ちます。見積時と施工時で資材価格が変わり、当初見込んだ利益が圧迫されることも少なくありません。価格転嫁が進まずに大幅赤字を計上し、事業継続を断念する「物価高倒産」も一定数発生しています。
人手不足と人件費の上昇
熟練職人の高齢化による引退と若年層のなり手不足が重なり、人材の確保がむずかしくなっています。人手を確保できなければ受注しても施工できず、賃上げや外注に頼ればコストが膨らみます。人手不足を直接の原因とする倒産も高水準で推移しており、自社の施工力低下が工期延長や外注割合の増加を招き、さらに収益を圧迫する悪循環に陥りやすくなっています。
構造的な資金繰りの悪化と後継者難
工期が長く、材料費や外注費を先行して立て替える建設業の取引構造は、そもそも資金繰りが厳しくなりやすい特性を持ちます。そこにコスト上昇が加わると、手元資金が一気に痩せていきます。加えて、経営トップの高齢化と後継者不在による事業承継の難しさも、倒産や休廃業を押し上げる構造的な要因となっています。
倒産に至る典型的なパターン
倒産は「赤字が続いたから」とは限らず、手元の現金が尽きた瞬間に訪れます。建設業でよく見られるパターンを理解しておくと、自社の危険な兆候に早く気づけます。
黒字倒産(利益は出ているのに現金が足りない)
帳簿上は黒字でも、入金よりも出金が先に集中すれば手元資金は底をつきます。工事代金の入金前に材料費・外注費の支払いが重なる建設業では、この「黒字倒産」が他業種よりも起きやすく、利益だけを見て安心していると見落としがちなリスクです。
連鎖倒産(元請・取引先の倒産に巻き込まれる)
元請や主要な取引先が倒産し、売掛金が回収できなくなると、連鎖的に自社の資金繰りも悚化します。多重の委託構造を持つ建設業では、一社の破綻が下請け・孫請けに波及しやすく、特定の取引先に売上が偏っているほどリスクが高まります。
赤字受注・不採算の累積
仕事を途切らせたくない一心で採算の合わない工事を受け続けると、件数をこなすほど赤字が積み上がります。工事ごとの原価を把握できていないと、どの現場が赤字なのかさえ見えず、気づいたときには資金が枟渇していたという事態になりかねません。
生き残るための対策
倒産を避けるための考え方は、大きく「現金の流れを見える化する」「工事ごとの収益性を管理する」「資金調達ルートを複数確保する」の三つに整理できます。
資金繰りを見える化し、資金ショートを事前に防ぐ
資金繰り表で数か月先までの入出金を予測し、「いつ・いくら資金が足りなくなるのか」を先回りでつかむことが、倒産回避の出発点です。黒字倒産の多くは、現金の流れを把握できていないことから起きます。まずは資金繰りの見える化から始め、必要な運転資金の水準を把握しましょう。
工事ごとの原価を管理し、収益性を守る
資材・人件費が上昇する局面では、工事ごとの原価を正しく把握し、実行予算と実原価を比較することが不可欠です。採算の合わない工事を継続しないためにも、見積段階で適切に価格転嫁し、利益を確保できる仕事を選ぶ姿勢が、結果的に収益とキャッシュの両方を守ります。
資金調達ルートを複数確保しておく
資金が足りなくなってから調達先を探すのでは間に合わないことがあります。平時から銀行融資や日本政策金融公庫、ファクタリング、補助金・助成金など複数のルートを把握し、状況に応じて使い分けられるようにしておくことが、一時的な資金不足を乗り切るリスク管理になります。
未払い・与信リスクを控える
連鎖倒産を防ぐには、取引前の与信管理や契約書の整備、特定の取引先に依存しすぎない取引先の分散が有効です。万が一工事代金が未払いになった場合の回収手段を知っておくことも、被害を最小限に抑えるうえで大切です。
まとめ
建設業の倒産增加の背景には、資材高騰と価格転嫁の遅れ、人手不足と人件費の上昇、そして資金繰りの構造的な厳しさと後継者難といった要因が重なっています。倒産は黒字倒産・連鎖倒産・赤字受注の累積といったパターンで起きやすく、いずれも「手元の現金が尽きる」ことが引き金になります。生き残るためには、資金繰りの見える化、工事ごとの収益性管理、資金調達ルートの複数確保、未払い・与信リスクの管理が鍵になります。業界全体の動向は年によって変わるため、最新の統計を確認しつつ、自社の資金繰りを早めに手当てしていくことが重要です。
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黒字倒産の仕組みは「なぜ建設業は黒字倒産するのか」で、資金繰りの考え方は「建設業の資金繰りはなぜ厳しい」で詳しく解説しています。原価管理の基礎は「建設業の原価管理とは」を、資金調達手段の比較は「建設業の資金調達7つの方法を比較」を、全体像は「建設業のキャッシュフロー完全ガイド」をあわせてご覧ください。
監修者
与謝君惠
代表取締役
- 代表取締役
株式会社パラダイム設立

