給湯設備は、一日の使用量だけでなく、何分間に何℃の湯を何L使うかをもとに計画します。必要な熱を加熱装置で供給する分と、貯湯槽に蓄えて供給する分に分けると、容量選定の根拠が明確になります。
中央式と局所式の選び方
方式 | 検討しやすい条件 | 注意点 |
|---|---|---|
中央式 | 使用箇所が多い、まとまった湯量を継続して使う | 循環熱損失、返湯温度、保守時の供給停止範囲 |
局所式 | 使用箇所が分散し、時間帯や用途が異なる | 設置スペース、電気・ガス容量、機器ごとの保守 |
熱源はガス、電気ヒーター、ヒートポンプなどから、使用温度・外気条件・稼働時間・設置場所・エネルギー契約を踏まえて選びます。高効率機器でも低外気温や高温出湯で能力が変わることがあるため、定格値だけで冬季の供給能力を判断しません。
40℃の湯400Lに必要な60℃の湯量
30分間で40℃の湯を400L使用し、給水温度15℃、貯湯温度60℃と仮定します。混合時の熱損失を無視すると、必要な60℃の湯量は次の式で求められます。
高温湯量=混合湯量×(使用温度−給水温度)÷(貯湯温度−給水温度)
400×(40−15)÷(60−15)≒222Lです。残りの約178Lは15℃の給水になります。これは混合の理論値で、222Lの公称貯湯槽を選べばよいという意味ではありません。槽内の温度分布、補給水との混合、配管熱損失、利用できない残量を考慮します。
加熱能力と貯湯量を組み合わせる計算例
水1Lを約1kg、比熱を4.186kJ/(kg・K)とすると、上記の需要に必要な熱量は、400×4.186×25÷3,600≒11.63kWhです。
項目 | この例の計算 |
|---|---|
ピーク需要の熱量 | 11.63kWh/30分 |
加熱装置の有効出力 | 12kWと仮定 |
30分に供給できる熱量 | 12×0.5=6.0kWh |
貯湯で補う熱量 | 11.63−6.0=5.63kWh |
60℃貯湯の理論必要量 | 5.63÷(4.186×45÷3,600)≒108L |
加熱中の熱を需要に利用できる単純モデルでは、貯湯による補充は理論上約108Lです。実際は熱交換器の伝熱能力、制御、配管損失、貯湯槽の有効利用率を考慮して選定します。12kWは湯に与える有効熱出力であり、電力や燃料の入力値ではありません。入力から計算する場合は効率・COPの定義を確認してください。
ピーク後の回復も必要です。200Lを15℃から60℃に加熱する熱量は約10.47kWhで、有効出力12kWなら理論上約0.87時間、約52分です。その間にも使用が続く場合や放熱がある場合、回復はさらに遅くなります。
給湯循環は温度と待ち時間を確認する
中央式では、配管の保温、返湯経路、枝管の長さ、循環流量を一緒に検討します。循環ポンプは一般に配管からの放熱と許容温度低下をもとに検討し、給湯の瞬時最大使用量をそのまま循環流量にしません。長い枝管や使われない末端に滞留域が生じないようにします。
配管圧力も重要です。給水・給湯の圧力差や熱交換器の抵抗で混合水栓の使い勝手が変わるため、給水管径と圧力損失の計算まで含めて確認します。膨張水の処理や安全装置は機器の仕様と設置基準に従います。
温度管理とやけど防止を両立する
厚生労働省の建築物衛生に関する維持管理要領では、循環式の中央式給湯設備について、湯槽内60℃以上、末端給湯栓55℃以上となるよう管理する考え方が示されています。これは衛生管理上の条件で、利用者が浴びる湯を55℃に設定する推奨ではありません。
貯湯・循環系統の温度を確認できる測定点と、用途に適した混合・温度制限機能を計画します。高温湯によるやけどを防ぎつつ、低温の滞留を生じさせない構成と維持管理が必要です。浴槽水を循環する設備は別の管理条件があるため、給湯循環と混同しないでください。
設計レビューに残す資料
- 使用湯温・時間帯別使用量・冬季給水温度の根拠。
- ピーク中の熱収支と、次のピークまでの回復計算。
- 公称容量と有効貯湯量、熱源の入力と出力の区別。
- 循環経路、測温点、混合弁、点検・排水・清掃の方法。
用途と器具を整理するには衛生器具設備の設計、見落とし確認には給排水設計のチェック項目も活用できます。熱量計算と運用計画をセットで残しましょう。
参考:厚生労働省「建築物における衛生的環境の維持管理について」。上記の容量計算は条件を仮定した説明例です。施設区分に応じた管理要領と採用機器の設計資料を確認してください。



