排水設計では「建物内でどの排水を分けるか」と「公共下水道が何を分けているか」を区別します。建物内でいう汚水・雑排水の分離と、公共下水道の合流式・分流式は、同じ分類ではありません。
公共下水道の分流式は、汚水と雨水を別の管で排除する方式です。便所排水と台所・洗面・浴室などの生活雑排水は、通常、公共下水道ではどちらも汚水側の対象になります。
汚水・雑排水・雨水の意味
建築設備での呼び方 | 主な発生源 | 計画時に見る性質 |
|---|---|---|
汚水(便所系統) | 大便器・小便器 | し尿、固形物、臭気、通気 |
雑排水 | 台所・洗面・浴室・洗濯 | 油脂、毛髪、洗剤、温度、排水量 |
雨水 | 屋根・バルコニー・敷地 | 降雨強度、集水面積、土砂、越流経路 |
特殊な排水 | 工場・実験室・医療関連設備等 | 水質、温度、有害物質、前処理の必要性 |
「汚水」は文脈によって便所排水だけを指す場合と、生活雑排水を含む場合があります。図面では「便所排水」「厨房排水」「雨水」と発生源を併記すると誤接続を防ぎやすくなります。
公共下水道の分流式と合流式
分流式では汚水と雨水を別の排水先へ接続します。合流式では公共側の同じ管路で扱いますが、建物内からすべてを無条件に一本にしてよいという意味ではありません。敷地内での分離範囲、合流位置、ますの構造は下水道管理者の基準を確認します。東京都下水道局「分流地区における排水設備の工事について」
分流式区域での接続模式図
便所 → 便所排水系統 → 汚水側のます → 公共汚水管
台所・浴室・洗面 → 雑排水系統(必要な前処理)→ 汚水側のます → 公共汚水管
屋根・敷地 → 雨水系統 → 管理者が指定する雨水の排除先
矢印は接続関係の概念で、実際の合流位置や前処理の要否を指定する施工図ではありません。水が透明に見えることや臭いが少ないことを理由に、雑排水を雨水管へ接続しないでください。
建物内で系統を分ける判断軸
建物内の分離は、排水の性質、維持管理、通気、将来の用途変更から判断します。便所系統と厨房系統を分けると、詰まりの原因や清掃範囲を管理しやすくなります。一方、立て管を増やす場合はPS面積、掃除口、通気、横引きルートを合わせて検討します。
- 厨房:油脂の流出対策と阻集器の清掃・搬出経路を確認する。
- 美容・理容用途:毛髪を回収する方法と管理担当を確認する。
- 高温排水・薬品排水:管材の適合性と水質条件を確認する。
- 地下階:自然流下の可否、逆流リスク、排水槽・ポンプの要否を確認する。
- テナント区画:現在の用途と将来の用途の想定を図面で分ける。
阻集器を付ければすべての排水基準を満たすわけではありません。選定の考え方は阻集器の選定、届出・水質条件は給排水設計の法規と事前協議で確認できます。
浄化槽区域では生活雑排水も処理する
合併処理浄化槽は、し尿と生活雑排水を合わせて処理する設備です。「便所だけを浄化槽へ、生活雑排水をそのまま側溝へ」という接続を、新規計画の一般的な方法として扱ってはいけません。既存の単独処理浄化槽がある場合は、自治体と転換・改修の条件を確認します。環境省「浄化槽Q&A」
処理後の放流先にも条件があります。設置可否、処理対象人数・用途、放流先、保守点検、清掃車の接近経路を基本計画で整理します。雨水を浄化槽へ流入させると処理量の前提が変わるため、系統図で生活排水と雨水を追跡します。
管径・勾配・通気は系統を決めた後に確認する
まず器具の種類と数、使用条件、連続排水の有無を整理し、採用する基準の方法で排水負荷を算定します。その後、横枝管・立て管・横主管それぞれの選定表と条件を照合します。排水負荷単位をL/sへ直接読み替えることはできません。
横引き配管は、必要勾配だけでなく、接続先の高さから上流側の管底高さが成立するかを確認します。配管長が12m、計画勾配が1/100なら必要落差は120mmです。この値に管の外径や支持・保温等の空間を加えて、天井や床下に納まるかを判断します。詳しい手順は排水管径と勾配の決め方を参照してください。
系統図で確認するチェックリスト
- すべての器具から最終接続先まで、系統線を連続して追えるか。
- 分流式区域の雨水管へ、厨房・洗面・洗濯排水がつながっていないか。
- 前処理が必要な系統に、点検・清掃できる設備があるか。
- 通気とトラップ、掃除口の位置が維持管理に適しているか。
- 下水道台帳のます位置・高さと、現地調査・協議結果が一致するか。
- 用途変更時に影響を受ける系統を図面に記録したか。
系統分離の検討では、器具表、排水系統図、敷地排水図、公共ますの調査結果をそろえると、建物内と公共側の条件を整理できます。給排水設備の設計について相談する
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



