設備設計ナレッジ

空調ゾーニングとは?用途・方位・運転時間で分ける設計手順と具体例

空調ゾーニングを用途・方位・運転時間から計画し、負荷ゾーン・制御・空調系統へ落とし込む手順を解説。窓際・執務室・会議室・サーバー室の仮想例を使い、ビルマルチやVAVの制約、テナント計量、保守停止、設計者と管理者の確認事項を整理します。

空調ゾーニングの考え方|用途・方位・運転時間と制御ゾーンの実務
空調・換気
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空調ゾーニングとは、建物内を負荷の特徴や使い方が近い区画に分け、必要な空調・制御を割り当てることです。用途・方位・運転時間を重ねて検討しますが、平面図を色分けするだけでは完了しません。室内機の操作単位、空調系統、計量、停止時の影響まで対応付ける必要があります。

この記事では、オフィスの仮想例を使い、負荷の違いを設備の割付へ落とし込む手順を解説します。設計初期に意匠・設備・建主・管理者で確認する項目も整理します。

ゾーニングは何のために行うのか

窓際と建物中央、一般執務室と会議室では、必要な能力や運転時間が異なります。同じ温度センサーや冷暖モードで無理にまとめると、片側は暑いのに他方は寒い、会議室だけ使うために広い範囲を運転する、といった問題が生じます。

一方、細かく分けるほど良いわけでもありません。機器・配管・ダクト・制御が増えると、天井内の納まりや管理が複雑になります。必要な独立性と、設備量・保守性のバランスを取ることが設計の目的です。

国土交通省の官庁施設向け基準でも、負荷傾向、室の使用条件、空調条件に応じたゾーニングと制御を求めています。これは官庁施設の性能基準であり、民間建物すべてを同じ区画数や系統構成にする規定ではありません。参考:官庁施設の基本的性能基準・令和6年改定

区切る条件は用途・方位・運転時間

用途|温湿度・人数・内部発熱を分ける

執務室、会議室、厨房、サーバー室などの温湿度要求・在室人数・機器発熱・換気条件を整理します。会議室は使用時に人数が集中し、不使用時は負荷が小さくなるため、執務室と同じ制御でよいかを確認します。用途名が同じ部屋でも、密度や機器量が違えば別の扱いが必要です。

方位|窓際と中央の負荷変動を分ける

外壁・窓に近いペリメーターは日射や外気温の影響を受けやすく、建物中央のインテリアは人体・照明・機器発熱の影響が相対的に大きくなります。東西南北で日射の時間も違うため、冬でも窓際は暖房、中央は冷房という条件が同時に生じる場合があります。

ペリメーターの幅を外壁から一律の距離で決めず、窓の大きさ・性能、遮蔽、室の奥行き、吹出し・還気の位置と負荷計算から検討します。外皮の変更があればゾーニングも見直します。

運転時間|時間外・休日・連続使用を分ける

標準勤務、会議室の時間外利用、休日利用、連続運転を重ねます。夜間の小区画利用のために、不要な室や熱源・搬送設備まで動かす構成になっていないかが確認点です。将来のテナント入替や区画変更も、想定する範囲を建主と共有します。

負荷ゾーン・制御ゾーン・空調系統は同じではない

区分

何を表すか

確認すること

負荷ゾーン

日射・内部発熱・使用条件等が近い範囲

冷暖房の必要時刻や顕熱・潜熱が似ているか

制御ゾーン

センサーや操作により温度・風量等を調整する単位

センサーが区画の状態を代表しているか、設定が独立するか

空調系統

AHU・熱源・冷媒配管等でつながる範囲

能力、冷暖モード、故障や保守停止の影響範囲

計量・費用配分の単位

計測または按分して使用量・費用を扱う範囲

実測と按分の違い、共用分、テナント変更時の対応

例えば、室内機ごとにリモコンがあっても、同一冷媒系統の冷暖切換や能力は共有する場合があります。操作が独立していることと、冷房・暖房・故障停止まで独立することを区別します。方式ごとの構成は空調方式の選び方も参照してください。

オフィスの割付例|平面から系統へ落とし込む

以下は手順を説明する仮想例です。寸法・能力・配管ルートを示す施工図ではありません。西側窓際、中央執務室、会議室、サーバー室の4区画を想定します。

1.平面に負荷と使い方を書き込む

西側の外壁・窓

建物中央側

A:西側窓際
午後の日射、冬季の暖房要求を確認

B:中央執務室
人体・照明・機器の発熱が中心

C:会議室
予約に応じて人数が増減、時間外利用あり

D:サーバー室
機器の連続発熱、許容温度・停止時間を別途設定

区画ごとの負荷は熱負荷計算で確認します。AとBを分ける理由は位置だけでなく、同じ時刻に求める冷暖モードが違うかどうかです。Cでは温度調整に加え、在室人数に対応した換気も確認します。

2.区画・制御・系統を対応付ける

次の矢印は設備の対応関係を表し、空気や冷媒の流れ方向を示すものではありません。

区画→制御→系統の例

採用理由と残る確認事項

A→室内機A・センサーA→冷媒系統1

Bと異なる冷暖モードが必要な場合に分ける。窓際だけを代表する検出位置を確認

B・C→各室内機・各センサー→冷媒系統2

個別操作できる仕様を仮定。ただし冷暖切換・同時使用時の能力・時間外運転の制約を確認

D→専用の温度監視・空調→系統3

業務継続要求に応じた構成例。必要能力・冗長性・故障通知を別途決める

A・B・C→必要外気量の整理→換気・外気処理系統

Cだけの時間外利用でも必要な換気を確保できるか、空調の停止と連動していないかを確認

BとCで冷暖モードや使用条件が合わなければ、系統を分ける、冷暖同時型を比較するなどの再検討が必要です。図を作った後に制約を確認し、成立しない組合せを修正することがポイントです。

方式によって変わる制御の確認事項

AHU・VAV・FCU

AHUから送る空気をVAVで調整する場合、ゾーンごとの必要風量、最小風量、温度検出、給気温度との関係を確認します。風量を絞るだけでは処理できない暖房要求や、換気の確保にも注意します。FCUを使う場合は、冷温水の供給条件と各室の要求、外気処理設備との分担を整理します。

ビルマルチ|管数だけで冷暖同時運転を判断しない

ビルマルチは、冷暖切換型と冷暖同時型、接続できる室内機や制御仕様を確認します。「2管式だから冷暖同時運転できない」とは限りません。三菱電機のシティマルチWR2には2管式冷暖同時の構成があります。メーカーの分流機器・接続条件・能力表まで照合して判断します。出典:三菱電機「シティマルチWR2 Eeco」

BEMS・中央監視

スケジュール、温度、運転状態、エネルギー使用量をゾーンに対応付けると、運用改善を行いやすくなります。ただし、監視・制御機能を追加しても、設備自体の冷暖モードや系統の制約がなくなるわけではありません。表示名・区画番号・機器番号をそろえ、管理者が実際に操作できる単位を確認します。

特殊用途は要求条件から独立性を決める

  • サーバー室・電気室:機器発熱、許容温度、外気条件、停止の影響から換気・冷房・バックアップを計画します。すべての電気室を24時間冷房やN+1構成にするという一律の条件ではありません。国交省の設計基準も電気室の換気は機器発熱等に応じて計画する内容です。
  • 厨房:排気量に対応した給気、隣接区画との圧力関係、臭気・油煙の移動を確認します。排気系統ではグリス除去装置やダクト清掃・点検を検討し、厨房排水の油脂を分離するグリーストラップとは区別します。
  • 清浄度・封じ込めを求める室:必要な清浄度や差圧、排気対象、給排気バランスを個別に設定します。室名だけで陽圧・陰圧を決めず、その施設の要求条件を確認します。

参考:国土交通省「建築設備設計基準・令和6年版」、東京消防庁「飲食店の厨房設備等に係る火災予防対策ガイドライン」。

テナント・計量・保守停止を合わせて確認する

テナント区画と空調・計量の境界を照合し、共用分や按分の方法を明確にします。リモコンを分けただけでは、熱源・冷媒系統の停止や能力不足の影響まで分離できません。将来のテナント分割時に、機器・制御・計量のどの変更が必要になるかも整理します。

空調ゾーンと防火区画は目的が異なります。境界を合わせると系統を整理しやすい場合がありますが、負荷の区分だけで防火上の処置を判断しません。ダクト・配管の区画貫通は別途確認し、配管については配管設備の建築基準法チェックへ進んでください。

主な確認担当

合意する内容

建主・管理者

使用時間、操作権限、許容停止時間、費用配分、将来区画

意匠設計

部屋・窓・間仕切り・天井・点検スペース、防火区画

設備設計

負荷、外気量、機器・系統、センサー、制御、計量との対応

施工・試運転担当

機器番号と実配線・配管、制御設定、運転・停止・警報の確認

最終確認では、時間外に一部だけ運転する、冷房と暖房の要求が重なる、一系統が停止する、間仕切りが変わるという場面を順に当てはめます。これらに対する動作と制約を説明できる状態にすることが、実際に使えるゾーニング計画の目安です。

参考資料の確認日:2026年10月9日。