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排煙設備の設置基準と免除条件|令126条の2・告示1436号の判定フローと設計チェックリスト

排煙設備の設置基準と免除条件を体系的に解説。令126条の2の設置義務、告示第1436号の免除規定、自然排煙と機械排煙の選定、防煙区画の考え方、設置判定フローを設計レビュー用チェックリスト付きでまとめました。

排煙設備の設置基準と免除条件|令126条の2・告示1436号の判定フローと設計チェックリスト
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公開日
2026年5月5日
更新日
2026年5月6日

排煙設備が確保する避難安全

排煙設備は、火災時に発生する煙を建物外部へ排出し、避難経路の視界と空気質を確保するための設備です。火災による死傷の多くは煙による視界喪失と一酸化炭素中毒に起因するため、避難安全の観点から極めて重要な役割を担います。建築基準法施行令第126条の2で設置義務が定められ、平成12年建設省告示第1436号で一定条件下の免除が認められています。本記事では、設置義務の判定から免除の検討、自然排煙・機械排煙の選定、設計実務のフローまでを整理します。

排煙設備の設置義務(令126条の2)

設置義務の対象

令126条の2では、次の建築物に排煙設備の設置を義務づけています。第一に、特殊建築物(劇場・病院・ホテル・百貨店等)で延床面積500㎡を超えるもの。第二に、階数が3以上で延床面積500㎡を超える建築物。第三に、令第116条の2に規定する開口部を有しない居室(いわゆる「無窓居室」)。第四に、延床面積1,000㎡を超える建築物の200㎡を超える居室など、用途・規模・居室面積に応じた区分があります。設備設計者は、意匠図から各居室の用途・面積・採光開口を確認したうえで対象を判定します。

防煙区画の考え方

排煙設備は居室ごと、または排煙区画ごとに計画します。1区画は床面積500㎡以内に収め、防煙壁または防煙垂壁(一般に天井から下方50cm以上の不燃材料の垂れ壁)で区画します。区画は煙の拡散を遮り、各区画の排煙能力を発揮させるための前提条件です。意匠側の天井形状・梁・間仕切り計画と整合させ、排煙口・防煙垂壁の位置を早期に確定することが重要です。

自然排煙と機械排煙の選定

自然排煙

自然排煙は、外壁に面した排煙窓(排煙に有効な開口部)により煙を排出する方式です。有効面積は防煙区画の床面積の1/50以上が必要で、天井面から下方80cm以内に設けます。手動開放装置は床面から80〜150cmの位置に設置し、自動開放装置と併用するのが一般的です。意匠デザインへの影響が比較的小さく、初期コスト・運転コストを抑えられるメリットがあります。一方で、外壁面が確保できない居室や、煙突効果による逆流リスクのある低層階では採用しにくい点に注意が必要です。

機械排煙

機械排煙は、排煙ファンにより強制的に煙を排出する方式です。排煙量は防煙区画の床面積1㎡あたり1㎥/分以上(最低120㎥/分)、2以上の防煙区画にまたがる場合は最大区画の床面積1㎡あたり2㎥/分以上が必要です。排煙ファンは煙温度280℃の状態で30分以上の連続運転に耐える耐熱性能を持つ機種を選定します。排煙ダクトは不燃材料製とし、防火区画貫通部には排煙用防火ダンパー(特定防火設備)を設けます。排煙口は防煙区画の天井または天井から80cm以内の壁に設け、手動開放装置と連動させます。

方式選定の考え方

外壁に面する居室では自然排煙が基本ですが、内部居室・地下階・無窓階・大規模空間では機械排煙が必要となります。同一建物内で自然排煙と機械排煙を組み合わせる事例も多く、その場合は接続する防煙区画の独立性(兼用しない計画)に注意します。意匠デザイン上の制約(外装への排煙窓配置、ファサード意匠との調整)と、設備コスト(機械排煙の電源・点検・メンテナンス)を比較したうえで方針を決定します。

告示第1436号による免除条件

主な免除パターン

平成12年建設省告示第1436号では、一定の条件を満たす居室について排煙設備の免除を認めています。代表的なパターンは、床面積100㎡以内で内装の壁・天井を不燃材料で仕上げた居室、天井高さが3m以上で内装を不燃材料で仕上げた居室、準耐火構造で床面積500㎡以内に防火区画され内装を不燃材料で仕上げた居室などです。階段室・昇降機昇降路・パイプスペースのような特殊な部分にも個別の適用区分があります。

免除適用時の留意点

免除条件の適用は、内装仕上げの不燃化、防火区画の構成、天井高さの確保など、意匠・構造設計と一体で検討する必要があります。免除を受ける場合でも、根拠条文と適用要件を確認申請書・設計図書に明記し、施工段階での仕様変更(内装の準不燃材料への置換など)が起きないよう仕様書で固めます。免除と非免除の居室が混在する場合は、両者の境界での防煙区画の連続性、隣接区画への煙の流入防止に特に注意が必要です。

設置判定フロー

排煙設備の設計は次の流れで進めるのが効率的です。第1に、建物の用途・延床面積・階数から令126条の2の設置義務該当性を判定します。第2に、各居室・各部分について告示第1436号の免除条件に該当するかを検討し、免除可能な居室を整理します。第3に、免除を受けない居室について、外壁面の有無や用途特性から自然排煙・機械排煙の方式を決定します。第4に、各防煙区画(500㎡以内)の区画線と防煙垂壁の位置を意匠と調整します。第5に、機械排煙の場合は排煙ファン容量、排煙ダクト経路、排煙口位置、操作装置の計画を行います。最後に、確認申請に向けて根拠条文と仕様を設計図書に明記します。

設計レビュー用チェックリスト

基本設計・実施設計の節目で確認すべき項目を整理しました。

□ 建物全体が令126条の2の設置義務対象に該当するか確認したか

□ 各居室の用途・床面積・採光開口から個別の対象判定を行ったか

□ 告示第1436号の免除適用可否を居室ごとに検討したか

□ 免除根拠(内装不燃・天井高・防火区画など)を設計図書に明記したか

□ 防煙区画が床面積500㎡以内に区画されているか

□ 防煙垂壁の高さ(天井から50cm以上)と材料(不燃)が適切か

□ 自然排煙の有効開口面積が床面積の1/50以上を確保しているか

□ 排煙窓の位置(天井から80cm以内)と開放装置の取付高(床から80〜150cm)が適合しているか

□ 機械排煙の排煙量(1㎡あたり1㎥/分以上、最低120㎥/分・複数区画は2㎥/分)が確保されているか

□ 排煙ファンの耐熱性能(280℃で30分以上)と非常電源の容量が確保されているか

□ 排煙ダクトの不燃材料化と防火区画貫通部の排煙用防火ダンパーが計画されているか

まとめ

排煙設備の設計は、令126条の2による設置義務の判定、告示第1436号による免除可否の検討、自然排煙・機械排煙の方式選定という3層の判断で構成されます。これに防煙区画の構成、排煙能力の確保、ファン耐熱性能・非常電源など設備仕様の決定が続きます。意匠・構造設計と早期に連携して各居室の条件を確定させ、本記事のチェックリストを設計レビューに組み込むことで、確実な基準適合と避難安全の確保を実現してください。

監修者

長谷川一夫

機械設備設計部

パラダイム部長

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