設備設計ナレッジ

給水方式の選び方|直結直圧・直結増圧・受水槽方式の比較と選定手順

直結直圧・直結増圧・受水槽方式を、水圧、使用水量、断水・停電、維持管理から比較。水道事業者との協議から末端圧力の確認までの選定手順と、事務所・集合住宅・継続給水が必要な施設の検討点を解説します。

給水方式の選定フロー|直結直圧・直結増圧・受水槽方式の判断基準と実務
plumbing
公開日
2026年5月13日
更新日
2026年9月27日

給水方式は建物の階数だけでは決まりません。水道事業者が認める条件、必要流量と末端圧力、断水時の継続性、維持管理の体制を確認して選びます。直結方式が利用できる範囲は地域や制度の見直しで変わるため、計画初期の協議が欠かせません。

3つの給水方式を比較する

方式

仕組み

主な確認点

直結直圧

配水管の圧力で直接給水する

設計水圧で最上・最不利器具の流量と圧力を満たせるか

直結増圧

配水管からの給水を増圧設備で補う

水道事業者の適用条件、増圧・逆流防止装置、停電時の対応

受水槽

水槽に受けてポンプ等で給水する

貯留量、水質管理、設置・点検空間、清掃時の運用

受水槽方式には、ポンプ直送方式や高置水槽へ揚水する方式があります。どちらも受水槽を使いますが、給水圧力の確保と停電時の挙動が異なります。方式名だけで事業継続性を判断せず、系統図で給水経路を確認します。

給水方式を決める5段階の流れ

  1. 供給条件を確認:配水管、引込位置、設計水圧、メーター、直結方式の適用条件を水道事業者に照会する。
  2. 需要を算定:建物用途、器具、同時使用、特殊機器の連続需要を整理する。
  3. 末端圧力を計算:高さと損失を差し引き、直圧で必要圧力が残るか確認する。
  4. 継続性を比較:断水、停電、清掃、機器故障時に必要な用途と時間を決める。
  5. 維持管理と費用を比較:設備費だけでなく、電力、清掃、点検、更新を含めて決定する。

東京都水道局でも直結給水の適用拡大などの見直しが行われています。「何階以上は必ず受水槽」と固定的に判断せず、その時点の地域条件を確認してください。

直圧で給水できるかを水頭で考える

判定の基本は、入口で使える水頭から、器具までの高さ、配管・機器の損失を差し引き、必要な末端水頭を残せるかです。

利用可能水頭 ≧ 高低差 + 配管・機器損失 + 器具の必要水頭

例えば設計水圧が300kPaなら、水頭は約30.6mです。高低差12m、損失8m、必要末端水頭5mを仮定すると、必要量は25mとなり、計算上は約5.6mが残ります。ただし、これは説明用の仮定で、実際の設計水圧や器具条件を満たした判定ではありません。

瞬時最大流量が変わると損失も変化します。高層部だけでなく、特殊機器や損失の大きい経路も比較します。詳細は給水管径・圧力損失の計算手順で確認できます。

停電・断水時の違いを整理する

方式

停電時

水道断水時

直結直圧

水道側の供給が維持されれば給水できる場合がある

原則として給水を継続できない

直結増圧

増圧設備が停止。バイパス等の有無と到達圧力による

増圧設備だけでは水源を確保できない

受水槽・ポンプ直送

槽内に水があっても、給水にはポンプ電源等が必要

残量と給水手段の範囲で継続を検討

高置水槽併用

槽内残量を重力で給水できる範囲がある

残量・圧力・使用制限に応じて継続を検討

受水槽があるだけで、すべての器具へ一定時間給水できるとは限りません。必要用途を絞るか、非常電源を確保するか、非常用取水口を設けるかを検討します。貯留量は受水槽・高置水槽の容量計算と併せて確認します。

用途ごとに優先条件を決める

一般事務所では在館時間と休日の滞留、集合住宅では時間帯の需要集中や各戸の圧力、医療・宿泊などの施設では停止できない用途を整理します。同じ用途でも規模や運用が違うため、方式を固定せず比較表へ条件を記入します。

受水槽方式では清掃・点検・搬入経路と管理区分、直結増圧方式では保守点検や機器交換時の停止範囲が重要です。高低差の大きい建物は低層部の過大圧力を抑えるゾーニングも確認してください。

協議・設計図書に残す内容

  • 水道事業者から確認した設計水圧・流量・適用条件。
  • 方式比較の理由と、通常時・非常時の必要性能。
  • 系統図、負荷計算、最不利経路の圧力計算。
  • 水質管理・清掃・点検・更新の責任範囲と費用。

衛生・申請上の確認点は水道法・下水道法と設備設計で整理しています。協議結果を図面と計算書に反映し、後から別の前提に置き換わらないようにしましょう。

参考:東京都水道局「給水方式」、同「直結給水の普及促進」。東京都の条件を他の地域へそのまま適用せず、管轄事業者の基準を確認してください。

監修者

長

長谷川一夫

機械設備設計部

パラダイム部長