受水槽の容量は、一日使用水量に一定の割合を掛けるだけで確定できません。需要が集中する時間帯の不足量を補えることと、通常運用で水が適切に入れ替わることの両方を確認します。高置水槽も、給水量と揚水ポンプの運転条件から有効容量を決めます。
容量計算に必要な条件をそろえる
項目 | 確認する内容 |
|---|---|
使用者・用途 | 在館人数、営業時間、厨房・浴室・清掃などの用途別使用量 |
需要の時間変動 | 時間平均・時間最大・瞬時最大のどれを扱うか |
補給能力 | 水道事業者と協議した引込管、メーター、給水圧力、補給時間 |
運用条件 | ポンプ制御水位、清掃時の断水可否、非常時の必要量 |
国土交通省の建築設備設計基準は官庁施設向けの設計基準です。民間建築物でも参考になりますが、その数値を全国共通の法定容量として扱うことはできません。水道事業者の基準、用途別の設計資料、類似施設の実測値を照合します。
一日使用水量の計算例
在館者300人の事務所で、一人一日使用量を計画条件として80Lと仮定します。厨房などの追加需要を別途扱う場合、一日使用水量は次のとおりです。
300人 × 80L/人・日 = 24,000L/日 = 24m³/日
80Lはこの例の仮定値であり、どの事務所にも適用できる基準値ではありません。在宅勤務率、飲食施設、節水器具などで需要は変わります。稼働時間を10時間とすると時間平均は2.4m³/hですが、これをそのままポンプの瞬時最大流量には使いません。
受水槽は補給量との収支で確かめる
仮に一日使用水量の半分に当たる12m³を有効容量の候補とします。この「半分」は初期検討の仮定で、最終判定は時間帯別の収支で行います。
需要が4.8m³/hとなる時間が2時間続き、その間の補給が3m³/hなら、水槽から補う量は(4.8−3)×2=3.6m³です。ピーク開始時に利用できる水量がこれを上回るか、その後の補給で水位を回復できるかを確認します。
次の時間帯の貯水量 = 現在の貯水量 + 補給量 − 使用量
この式で営業時間全体を追い、最低運転水位を下回らず、満水時に補給が適切に停止することを確認します。12m³あれば必ず足りる、という結論にはなりません。時間変動と補給条件が変われば必要容量も変わります。
有効容量・公称容量・高置水槽の違い
区分 | 容量の考え方 |
|---|---|
有効容量 | 設計上利用する上限水位と下限水位の間にある水量 |
公称・外形容量 | 製品の表示や外形から求める容量。有効容量とは一致しない |
高置水槽 | 揚水ポンプの補給と使用量、起動頻度、重力給水の必要圧力で検討 |
高置水槽で、補給停止中に4.8m³/hの需要を15分支える条件なら、その間の使用量は1.2m³です。これは停止時間を仮定した検討例で、最低必要容量ではありません。起動・停止水位の幅、同時補給の有無、非常時の残量などを加えて運転可能な容量を確認します。
受水槽も高置水槽も、底部の利用できない水量や上部空間を含む外形寸法だけでは選べません。メーカーの水位図で容量を照合します。方式の違いは給水方式の選定で整理しています。
水質・点検・BCPまで含めた設計チェック
- 通常日の需要が小さいときにも、水が長期間滞留しない容量と運用になっているか。
- 点検面、マンホール、清掃排水、搬入・将来更新の経路を確保しているか。
- 断水時に必要な用途と継続時間を定め、通常の運転容量と非常時の利用可能量を区別しているか。
- 槽を二分割する場合、清掃中の片槽運転で需要を満たせるか。
- 補給管と揚水ポンプの能力が、採用した水位・容量と整合しているか。
簡易専用水道の判定は、受水槽の有効容量が10m³を超えるかだけでなく、水の供給元や専用水道への該当性なども関係します。給排水の法規と協議事項を確認し、管理区分を所管に照会してください。
容量計算から配管・配置計画につなげる
設計図書には、人数・使用量原単位の出典、時間帯別収支、有効水位、補給条件を一緒に残します。容量の根拠が分かれば、用途変更時にも再計算できます。給水管径の決定手順と併せて、引込条件から末端まで一つの給水計画として検討しましょう。
参考:国土交通省「建築設備設計基準」、東京都水道局「給水方式」。採用する基準は計画地域・用途・協議条件に合わせて確認してください。
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



