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受水槽・高置水槽の容量計算|用途別算定式と六面点検・搬入計画の実務

受水槽・高置水槽の有効容量の算定方法を、建物用途別の1日使用水量と補給能力の考え方から解説。六面点検スペースや搬入経路の確保、水質管理、耐震・BCPまで、実務で押さえるべき設計のポイントを整理します。

受水槽・高置水槽の容量計算|用途別算定式と六面点検・搬入計画の実務
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公開日
2026年5月9日
更新日
2026年5月10日

受水槽容量の最適化が設計品質を左右する理由

受水槽方式を採用する建物では、受水槽および高置水槽の容量設定は給水設備設計の根幹を成す項目です。容量が小さすぎればピーク時の給水不足や給水ポンプの頻繁な発停を招き、機器寿命の短縮や使用感の悪化につながります。一方、容量が大きすぎると、設備スペースとイニシャルコストの増大に加え、滞留水による残留塩素低下・水質悪化のリスクが顕在化します。本記事では、用途別の1日使用水量から有効容量を算定する手順と、設置スペース、搬入計画、耐震・BCP、水質管理まで、実務で押さえておきたい設計の勘所を整理します。

受水槽容量決定の基本ステップ

受水槽容量の検討は、概ね次の流れで進めます。第一に、建物用途と利用人員・床面積から1日使用水量を算定します。第二に、水道事業者との協議で引込管口径と補給能力を確認します。第三に、補給能力とピーク使用量のバランスから有効容量比率(4/10〜6/10)を決定します。第四に、BCP対応や2槽分割の必要性を検討して最終容量を確定します。最後に、六面点検スペース・搬入経路・耐震基礎を含めた設置計画を意匠・構造と調整します。容量算定そのものよりも、補給能力の確認とスペース調整に手戻りが発生しやすいため、基本設計の早い段階で全体像を固めることが重要です。

建物用途別の1日使用水量の目安

1日使用水量は、給水対象人員または床面積に用途別の原単位を乗じて算定します。代表的な目安値は、一般オフィスが60〜100L/人・日、商業施設(物販店舗)が15〜30L/㎡・日、ホテルが350〜500L/室・日、病院が1,500〜3,500L/床・日、集合住宅が200〜350L/戸・日、学校が70〜100L/人・日です。これらはあくまで標準的なレンジであり、節水器具の採用状況、空調補給水・冷却塔補給水の有無、厨房・浴室の規模、来館者数の見込みなどによって大きく変動します。テナントの業態が未確定の場合は、上限値寄りで見込みつつ、将来の用途変更に柔軟に対応できるよう余裕を持たせるのが安全側の設計です。

なお、用途複合の建物では各用途の1日使用水量を合算し、ピーク時間帯が重なるか分散するかも踏まえて検討します。学校や事務所は平日昼間集中型、ホテルや住宅は朝夕ピーク型といった具合に、使用パターンの違いを意識すると過不足のない容量設定につながります。

受水槽有効容量の算定式と考え方

受水槽の有効容量は、一般に1日使用水量の4/10〜6/10を目安とします。この比率は、水道本管からの補給能力とピーク使用量のバランスで決まります。補給能力が十分(引込管口径に余裕があり、ピーク使用流量を大きく上回る)な場合は4/10程度で足り、補給能力に不安がある場合や水圧低下が懸念される地域では6/10程度まで増やします。逆に過大容量を避けたい場合や滞留時間を短くしたい場合は、補給能力を確保したうえで4/10寄りに設定するのが有効です。

具体例として、在勤者300人のオフィスビルを考えます。1日使用水量は300人×80L/人・日=24,000L、有効容量は24,000L×0.5=12,000L(12㎥)が目安となります。高置水槽を併用する場合、その有効容量は1日使用水量の1/10程度(この例では2,400L=2.4㎥)が目安です。BCP対応として断水時の保有水を別途確保したい場合は、必要日数分(一般に1〜3日)の生活用水量を残留水量として計画し、その分容量を上積みします。ただし、保有水と日常使用水を同一槽に持たせる場合は、滞留時間が延びる分、定期排水や水質モニタリングの計画とセットで検討する必要があります。

高置水槽の容量と設置高さの検討

高置水槽方式を採用する場合、容量は1日使用水量の1/10程度を基本に、ピーク時間帯の使用流量と揚水ポンプの能力から決定します。重要なのは容量だけでなく設置高さで、最上階の最遠端器具に必要圧力(一般水栓で30kPa、シャワー・湯沸器で50〜70kPa、フラッシュバルブで70kPa以上)を確保できる位置に置くことが前提です。器具必要圧力に立上り高さによる位置エネルギー、配管摩擦損失を加味し、不足する場合は塔屋を高くするか増圧ポンプを併用する判断が必要になります。意匠・構造設計に対して、塔屋の高さや屋上荷重の要求条件を早期に提示することが、後工程の手戻り防止につながります。

設置スペースと搬入経路の確保

受水槽の設置には、槽本体に加えて六面点検スペースが必要です。槽の周囲(側面・前後)にそれぞれ600mm以上、底面下に600mm以上、上部に1,000mm以上を確保するのが基本で、建築基準法および各自治体の指導要綱で具体的な離隔距離が規定されています。これにより、実際に必要な機械室の内寸は槽本体寸法より相当大きくなります。

例えば、12㎥の受水槽(槽サイズ例:3.0m×2.0m×2.0m)の場合、六面点検スペースを含めた機械室の必要内寸は、概ね4.2m×3.2m×3.6m以上となります。さらに、扉幅・通路幅・梁下高さに対して、搬入時の最大寸法が通せるかを必ず確認します。FRP製パネルタンクであれば1辺1m程度のパネルに分割できますが、SUS製や鋼板製の現場溶接タイプではより大きな資材搬入経路が必要です。意匠・構造との早期協議で、機械室位置・寸法・扉位置・搬入ルート・床荷重を一括で確定させるのが理想です。

水質管理と維持管理計画

有効容量10㎥を超える受水槽は水道法上の簡易専用水道に該当し、年1回以上の清掃と定期的な水質検査が義務付けられます。10㎥以下の小規模貯水槽水道についても、自治体条例で同等の管理が求められるケースが一般的です。設計段階では、滞留を防ぐために水入れ口(ボールタップ)と取水口を対角に配置し、オーバーフロー管・通気装置・吐水口空間(クロスコネクション防止のため、水面とボールタップ吐水口の間に吐水口空間150mm以上を確保)・マンホール(直径600mm以上)の設計に注意します。

容量が大きい施設や24時間運用の建物では、清掃時に給水を停止できないため、受水槽を2槽分割(中仕切り構造または2基並列)として、片側ずつ清掃できる計画とします。また、災害時の生活用水確保を目的に非常用取水栓(緊急遮断弁付き)を設ける場合は、平常時の点検性と非常時の使い勝手を両立させる位置に配置するとよいでしょう。

耐震・材質選定など設計上の追加留意点

耐震対策として、受水槽・高置水槽はSHASE-S 010や建築設備耐震設計・施工指針に基づく耐震クラス(S・A・B)を建物用途に応じて選定します。災害拠点病院や防災拠点となる施設ではSクラスの採用が一般的です。槽本体の耐震基礎・固定金物に加え、給排水配管の可とう継手や貫通部の処理も合わせて検討します。

材質はFRP製パネルタンク、SUS製パネルタンク、鋼板製(内面コーティング)から選定します。FRPは軽量・コスト面で有利ですが日射による藻類繁殖を避けるため遮光仕様を選び、屋外設置では断熱・遮光性能のある製品を採用します。SUSは耐食性・衛生面で優れ、長寿命を期待できますがコストが上がります。屋外設置では夏場の水温上昇と冬場の凍結を避けるため、断熱パネル・ヒーター・配管保温の検討が必要です。最後に、自治体ごとに引込口径・受水槽容量・設置位置に関する独自規定があるため、所轄水道事業者への事前協議を必ず行い、設計条件を文書で確認しておくことが重要です。

まとめ

受水槽容量は、建物用途別の1日使用水量を出発点に、補給能力との関係から有効容量比率を4/10〜6/10で設定するのが基本です。高置水槽は1日使用水量の1/10程度を目安としつつ、必要圧力から設置高さを逆算します。設計上は、容量の数字以上に、六面点検スペース・搬入経路・耐震・水質管理・自治体協議といった周辺条件の調整がプロジェクトの成否を分けます。意匠・構造との早期連携を前提に、過不足のない容量と適切な設置計画を組み立てましょう。当ポータルの受水槽容量算定ツールも、初期検討の生産性向上にぜひご活用ください。

監修者

長谷川一夫

機械設備設計部

パラダイム部長