BIMで設備設計の工数が減るかは、対象業務、標準の整備状況、変更の回数、受け渡し条件によって変わります。初回の入力時間だけを見ても、導入効果を正しく判断できません。
図面・集計の更新に使う時間が減っても、部品作成や交換後の補正が増える場合があります。準備、作成、変更、確認を同じ範囲で記録し、品質も合わせて比較することが重要です。
初期整備と案件ごとの作業を分ける
区分 | 記録する作業 | 評価の考え方 |
|---|---|---|
初期整備 | 教育、テンプレート、部品、試行 | 複数案件で再利用できる投資として把握 |
案件準備 | 参照モデル、座標、対象範囲、設定 | 毎案件発生する時間として記録 |
作成 | 入力、図面、機器表、必要属性 | 同じ成果物を従来方式と比較 |
変更・調整 | 設計変更、指摘対応、モデル交換 | 変更量と回数をそろえて比較 |
確認・納品 | 図面照合、属性確認、出力、検収 | 確認を省かず同じ品質条件で比較 |
初期整備を毎案件の作成時間に含め続けると効果が見えにくくなります。一方、毎回必要な補正をすべて初期投資として扱うと、運用費を過小評価します。繰り返して発生するかどうかを確認してください。
工数が減る可能性のある作業
同じ情報を複数図面や機器表で使う場合、入力元を統一できれば、変更時の転記や照合を減らせる可能性があります。立体的な調整を早く行えれば、後工程の変更を抑えられることもあります。
ただし、これらは標準と入力ルールが機能していることが前提です。図面への直接追記や別表への二重入力が多ければ、モデルを更新しても個別修正は残ります。まず繰り返す作業がどこにあるかを調べてください。
工数が増える主な原因
- 使う部品や図面設定が不足し、案件ごとに作り直している。
- モデルの用途が曖昧で、不要な詳細まで作り込んでいる。
- 他分野の座標や更新管理が整っていない。
- データ交換後の修正を毎回手作業で行っている。
- 確認者が使えず、作成担当者がすべての説明を担っている。
「何件か経験すれば必ず速くなる」と考えるより、時間が増えた原因を特定します。操作習得の問題か、標準不足か、契約範囲の問題かによって対策が異なります。
比較する案件の条件をそろえる
用途、規模、設備密度、設計段階、成果物、変更回数、担当者の習熟度を記録します。同じ床面積でも、機械室や設備系統が複雑なら作業量は変わります。案件全体の単純比較が難しい場合は、代表階や機器表作成などの限定業務を比較します。
従来方式に含めていた図面照合をBIM側で省いたまま「工数削減」としないことも大切です。確認作業を同じ範囲にそろえ、納品後の修正まで追います。
工数削減を計算する仮例
説明用の架空例として、同じ成果物を従来方式で120時間、BIMで案件準備20時間、作成55時間、変更15時間、確認20時間の計110時間とします。この範囲では10時間、約8.3%の減少です。これは実績や平均値ではありません。
別に初期標準整備が60時間あれば、その案件だけの合計は170時間です。仮に同条件で毎案件10時間減るなら、単純な時間の差し引きでは6案件分に相当します。ただし、実際の回収判断では標準の保守、ライセンス、案件条件の変化も含める必要があります。
品質と納期の指標も記録する
指標 | 記録例 |
|---|---|
図書の整合 | 図面と機器表の不一致、更新漏れの件数 |
調整 | 指摘への回答時間、同じ課題の再発 |
納品品質 | 受け渡し後の欠落・補正、差戻し |
再利用 | 次案件で使えた標準・部品と保守時間 |
属人化 | 別担当者が引き継ぐまでに必要な説明時間 |
品質指標は件数だけでなく影響も見ます。軽微な表記修正と、主要ルートのやり直しを同じ1件として扱うと、改善の優先順位を誤ります。
評価結果を次の導入判断へ使う
工数が増えた箇所には原因と対策を、減った箇所には再現する条件を記録します。次の案件では対象を広げるか、標準を直すか、外注を組み合わせるかを決めます。
必要な予算は設備BIM導入費用、再利用する標準はテンプレート整備、段階的な展開はBIM導入ロードマップで具体化してください。
参考資料
制度・製品情報の確認日:2026年9月26日。実案件では申請先の案内と利用する製品バージョンの資料も確認してください。
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



