Revitで設備設計を進めていると、「要件にちょうど合うファミリが存在しない」という壁に必ずぶつかります。メーカー提供ファミリは便利な一方で、パラメータが足りない、サイズバリエーションが不足している、集計に使いたい属性情報が入っていない、ジオメトリが重すぎてモデルが遅くなる、といった不満がつきものです。こうした場面で効いてくるのが、設備設計者自身がファミリを自作できるスキルです。本記事では、設備設計者がRevit MEPファミリを自作するための基本ステップを、接続ポイント(コネクタ)とシェアパラメータという2つの肝を中心に、よくある落とし穴とその回避策、優先して作るべきファミリの選び方まで含めて、実務目線で整理します。
そもそもファミリとは何か
Revitにおけるファミリとは、モデルを構成する「部品データ」の単位です。照明器具、ダクトのチーズ、コンセント、衛生器具、ポンプなど、図面・モデル上に現れるオブジェクトの一つ一つがファミリとして定義されています。ファミリは大きく3種類に分けられます。配管・ダクト・電線管など、プロジェクトに最初から組み込まれている「システムファミリ」、外部ファイル(.rfa)として読み込んで配置する「コンポーネント(ロード可能)ファミリ」、そして特定プロジェクト内だけで使う「インプレイスファミリ」です。
自作の対象になるのは、主にコンポーネントファミリです。さらに各ファミリは「タイプ」(型番・サイズ違いのバリエーション)を持ち、1つのファミリの中に複数タイプを格納できます。たとえば「角型ダクト用VAVユニット」というファミリの中に、サイズ別・風量別のタイプを並べておく、といった構成です。この「ファミリ=部品の種類/タイプ=そのバリエーション」という関係を最初に理解しておくと、後のパラメータ設計が一気に分かりやすくなります。
ファミリ作成の基本ステップ
ファミリ作成は「ファミリエディタ」という専用の編集環境で行います。流れは大きく次の5ステップに整理できます。
1. テンプレート選択:作るファミリの種類(照明設備、電気設備、ダクト・配管の接続部品、機械設備など)に対応したファミリテンプレート(.rft)を選びます。MEPでは特に重要で、ここで選んだテンプレートによって、後から追加できる接続ポイントの種類(ダクト/配管/電気など)が決まります。最初の選択を誤ると、後で接続ポイントが付けられず作り直しになります。
2. 参照面と寸法の設定:形状を作る前に、基準となる参照面(リファレンスプレーン)を引き、寸法を割り当てておきます。ジオメトリは直接ではなく、この参照面に拘束させるのが鉄則です。
3. ジオメトリ作成:押し出し・回転・スイープ・ブレンドなどのコマンドで形状を作成し、先ほどの参照面に拘束します。
4. パラメータ設定:寸法やプロパティをパラメータ化し、サイズを可変にしたり、集計・タグ用の属性を持たせたりします。接続ポイントもここで追加します。
5. フレックステスト:タイプを切り替えたりパラメータ値を変えたりして、形状と接続ポイントが破綻せずに追従するかを確認します。この「動かして壊れないか試す」工程を省くと、プロジェクトに読み込んだ後で不具合が表面化します。
接続ポイント(コネクタ)が生命線
MEPファミリが意匠・構造のファミリと決定的に違うのが、「接続ポイント(コネクタ)」を持つ点です。コネクタを正しく設定しないと、ダクトや配管・電線管と物理的に接続されず、Revitがそれを「システムの一部」として認識しません。その結果、風量・圧力損失・水量・電気容量といった計算がまったく回らなくなります。見た目だけ立派でも、計算に使えなければMEPファミリとしては不完全です。
コネクタ設定で最低限詰めておくべき項目は次のとおりです。
・位置と向き:参照面に拘束し、フローの向き(IN/OUT)も含めて正しく配置する。位置がパラメータで動く場合は、コネクタも一緒に追従するかをフレックステストで必ず確認する。
・形状とサイズ:丸/角/だ円などの形状を実際の接続口に合わせ、寸法はサイズパラメータに紐づけてタイプ変更に追従させる。
・システム分類:給気・還気・排気・給水・排水・電力・弱電などのシステム分類を設定する。ここを取り違えると、色分けやシステム検査でエラーの原因になる。
・フロー情報:風量・流量・電気容量などを計算に乗せるなら、コネクタのフロー設定(計算値/プリセット)を用途に合わせて選ぶ。
複数のコネクタを持つ部品(チーズ、VAV、ポンプなど)では、コネクタ同士を「リンク」させて流れの連続性を持たせる設定も忘れがちなポイントです。ここを雑にすると、見た目は作れても「計算に使えないファミリ」になってしまうため、コネクタはファミリ自作の中で最も丁寧に扱うべき部分だと考えてください。
シェアパラメータで集計・タグを効かせる
シェアパラメータ(共有パラメータ)は、複数のファミリやプロジェクトをまたいで共通利用できるパラメータです。集計表(スケジュール)への拾い出しやタグ表示に使うには、このシェアパラメータであることが必須条件になります。たとえば照明器具の「型番」「メーカー」「消費電力」をシェアパラメータとして持たせておけば、器具表をモデルから自動生成でき、設計変更があっても表が自動で追従します。
逆に、ファミリ内だけで完結する「ファミリパラメータ」で作ってしまうと、その値は集計やタグでは一切拾えません。後から「やはり集計したい」となってシェアパラメータに作り直すのは手間が大きいため、集計・タグに使う可能性のある属性は、最初からシェアパラメータで設計しておくのが定石です。
実務上の最大のポイントは、シェアパラメータを定義した「共有パラメータファイル(.txt)」を社内で一元管理することです。各人がバラバラにパラメータを作ると、名前は似ていても中身が別物になり、集計時に列がそろわないという事態を招きます。社内標準の共有パラメータファイルを1つ決め、全員がそこから読み込んで使う体制をつくることが、BIMの生産性を左右します。
作るべきファミリの優先順位
すべてのファミリを自作する必要はありません。労力をかける価値が高いのは、次の条件に当てはまるものです。
・社内で使用頻度が高いもの:プロジェクトを問わず繰り返し使う部品は、自作の投資が早く回収できます。社内規定の配管サポート、標準の点検口、自社仕様の制気口などが典型です。
・メーカー提供ファミリでは要件を満たせないもの:必要なパラメータや接続ポイントが欠けている、計算に使えない、といったファミリは自作で補う価値があります。
・ジオメトリがシンプルでパラメータを可変にしたいもの:形状が単純でサイズだけ変えたい部品は、自作との相性が良く、少ない工数で汎用的なファミリに仕上がります。損失計算用の接続部品などが該当します。
逆に、複雑な形状で使用頻度の低いファミリは、無理に自作せずメーカー提供品を使うか、外注を検討する方が合理的です。「作る・もらう・買う・任せる」を切り分ける視点を持つことが、ファミリ整備を続けるうえで重要です。
よくある落とし穴と回避策
ジオメトリが細かすぎてファイルが肥大化する:ボルトやフィンまで作り込むと、1つ1つは小さくてもモデル全体では動作が重くなります。検討段階ではシンプルな形状にとどめ、必要になった詳細設計以降の段階で詳細化する、という二段構えが有効です。
パラメータ名が社内でバラつく:「型番」「品番」「形式」のように同じ意味の列が乱立すると、集計・タグで拾えなくなります。共有パラメータファイルを一元管理し、命名ルールを明文化して防ぎます。
フレックステストをせずに配布する:サイズ変更でジオメトリやコネクタが破綻するファミリは、配置後に各プロジェクトで不具合を撒き散らします。社内配布前に、極端な値を含めて動作確認するルールを設けましょう。
バージョン管理が曖昧になる:同名ファミリの新旧が混在すると、どれが正なのか分からなくなります。保存先フォルダと更新履歴のルールを決め、ライブラリとして運用することが大切です。
効率的な学び方
ファミリ作成は覚えるべき項目が多いため、独学する場合はAutodesk公式のヘルプやチュートリアル、信頼できる解説動画から基礎を押さえるのが近道です。とりわけ効果的なのが、既存のメーカー提供ファミリを「ファミリエディタで開いて中身を観察する」勉強法です。他社がどんな参照面の引き方をし、どこにコネクタを置き、どのパラメータをシェアパラメータにしているかを読み解くと、自社ファミリの設計指針がそのまま見えてきます。
学んだことは、その都度ドキュメント化しておくと社内資産になります。テンプレートの選び方、命名ルール、コネクタ設定の手順をマニュアル化しておけば、属人化を防ぎ、新人が同じ品質でファミリを作れる体制に近づきます。
まとめ:シンプルなものから始める
ファミリ自作スキルは、Revitで設備設計を本格的に追求する事務所にとって不可欠な能力です。ただし、いきなり高度なものを狙う必要はありません。社内で使用頻度の高いシンプルなファミリから着手し、接続ポイント(コネクタ)とシェアパラメータという2つの肝を確実に押さえながら、フレックステストで品質を担保しつつ、少しずつ難易度を上げていく。この地道な進め方が、結局は最も確実で、ライブラリ全体の信頼性も高めてくれます。
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



