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省エネ基準適合義務化と設備設計|BEI算出・ZEB水準と設計チェックリスト

2025年4月施行の省エネ基準適合義務化を解説。PAL*と一次エネルギー消費量基準、空調・換気・照明・給湯・昇降機など設備別の省エネ対策、BEI算出の実務フロー、ZEB水準の目安まで、設計レビュー用チェックリスト付きでまとめました。

省エネ基準適合義務化と設備設計|BEI算出・ZEB水準と設計チェックリスト
regulation
公開日
2026年5月1日
更新日
2026年5月2日

2025年改正で何が変わったか

2025年4月から、住宅を含む全ての新築建築物に省エネ基準への適合が義務化されました。改正前は床面積300㎡以上の非住宅建築物にのみ届出または適合義務が課されていましたが、これが住宅を含む全ての新築建築物に拡大された形です。設備設計者は基本設計の初期段階から省エネ基準への適合を見据えた機器選定・制御計画を行う必要があり、これからの設計実務の前提条件となります。

省エネ基準の2つの柱

省エネ基準は、建物外皮の断熱性能を評価するPAL*(外皮基準)と、建物全体のエネルギー消費を評価する一次エネルギー消費量基準の2つで構成されます。両者は独立した基準ですが相互に影響し、特に外皮性能は空調負荷を通じて一次エネルギー消費量にも反映されます。

PAL*(外皮性能基準)

PAL*は外壁・屋根・窓の断熱性能と日射取得性能から、建物外皮の総合的な熱性能を評価する指標です。主に意匠設計の領域ですが、設備設計者にとっても無関係ではありません。外皮性能が低い建物は空調負荷が増大し、結果として一次エネルギー消費量が大きくなります。基本設計段階で意匠側からPAL*の値を共有してもらい、空調負荷計算に反映させることが重要です。

一次エネルギー消費量基準(BEI)

一次エネルギー消費量基準は、建物全体のエネルギー消費量を一次エネルギーに換算して評価する基準で、設備設計に直結します。設計値が基準値を下回る割合をBEI(Building Energy Index)と呼び、原則としてBEI≦1.0を満たす必要があります。計算対象は空調・換気・照明・給湯・昇降機の5設備で、これに太陽光発電などの効率化設備による削減分を加味した値で評価します。

ZEB水準の整理

省エネ基準(BEI≦1.0)を超える性能を目指す場合、ZEB(Net Zero Energy Building)の各水準が目標になります。代表的な区分は、ZEB Oriented(ZEB志向/用途・規模により30〜40%削減)、ZEB Ready(再エネを除いた状態で50%削減=BEI≦0.5)、Nearly ZEB(再エネ込みで75%削減=BEI≦0.25)、ZEB(再エネ込みで100%削減=BEI≦0)の4段階です。補助金制度や認証、テナント訴求など事業面のメリットも大きく、設計初期からの目標設定が重要です。

設備別の省エネ対策ポイント

空調設備

空調設備は一次エネルギー消費量に占める比率が大きく、省エネ対策の中心となります。主な手法は、高効率熱源機(高COP・APFのチラー・ヒートポンプ)の採用、全熱交換器による外気負荷低減、変流量制御(VWV・VAV)による搬送動力の削減、フリークーリングや外気冷房の活用です。VRF方式ではAPFの高い機種選定、セントラル方式では台数制御・インバーター制御の組み合わせが定石となります。

換気設備

換気設備の省エネ対策では、全熱交換器の採用が最も効果的です。省エネ計算上も全熱交換効率が直接BEIに反映されるため、採用効果が見えやすい設備です。CO2濃度に応じた必要換気量制御や、運転時間帯の最適化(DCV制御)も基準計算で評価される省エネ手法であり、執務空間の用途に応じて積極的に取り入れます。

照明設備

照明設備では高効率LED器具の採用が前提となります。これに加えて、調光制御・昼光連動制御・人感センサー制御の導入が有効です。とくに窓際の昼光連動制御と在室検知に基づく人感制御は、省エネ計算における評価が高く、BEI改善への寄与が大きい手法です。執務空間ではタスク・アンビエント照明の採用も効果的です。

給湯設備

給湯設備では、高効率ヒートポンプ給湯機(CO2冷媒など)の採用、潜熱回収型ガス給湯器、太陽熱利用などが有効です。建物用途・給湯需要の規模に応じて、循環方式・配管保温・台数構成を最適化することで、待機損失と搬送損失を抑えられます。

昇降機・効率化設備(太陽光発電ほか)

昇降機ではVVVF制御や回生制動、かご内LED照明の採用が省エネのポイントです。太陽光発電は発電量分が一次エネルギー消費量から差し引きできるため、BEIの改善に直結します。屋根・屋上・庇など設置可能面積を意匠側と早期に協議し、必要な発電容量を確保することがZEB達成の鍵となります。蓄電池やコージェネレーションの併用も、案件規模によっては有効な選択肢です。

省エネ計算の実務フロー

省エネ計算は次の流れで進めるのが一般的です。第1に、基本設計段階で目標BEIを設定します。法的にはBEI≦1.0ですが、ZEB認証取得や補助金活用を狙う場合はZEB Ready(0.5以下)など、より厳しい目標を置きます。第2に、各設備の仕様(熱源COP/APF・照明消費電力・全熱交換効率・給湯機効率など)を決定します。第3に、省エネ計算プログラム(建築物省エネ法のWebプログラム、Save-Building等)に入力してBEIを算出します。第4に、目標を超過する場合は機器仕様の見直しや太陽光発電の追加検討を行います。第5に、確認申請に省エネ適合判定書を添付して手続きを完了します。

設計レビュー用チェックリスト

省エネ基準適合に向けた設計レビューで確認すべき項目を整理しました。基本設計・実施設計の節目で活用してください。

□ 目標BEIが基本設計段階で設定・関係者間で合意されているか(法的水準/ZEB水準)

□ 意匠設計とPAL*(外皮性能)の値が共有され、空調負荷計算に反映されているか

□ 熱源機のCOP/APFが基準・目標を満たす機種選定になっているか

□ 全熱交換器・変流量制御など空調搬送動力の削減策が反映されているか

□ 換気のCO2制御・時間帯運転制御が計画されているか

□ 照明のLED化・調光・昼光連動・人感制御が用途に応じて計画されているか

□ 給湯方式と効率機器の選定が基準値以下を確保しているか

□ 昇降機の制御方式(VVVF・回生制動など)が省エネ仕様か

□ 太陽光発電の設置容量・位置が意匠側と協議済みか

□ Webプログラム等での試算結果がBEI≦1.0(または目標値)を確実に満たすか

まとめ

2025年の省エネ基準適合義務化により、全ての新築建築物でPAL*と一次エネルギー消費量基準への適合が必須となりました。設備設計者は、空調・換気・照明・給湯・昇降機の各設備で省エネ対策を講じ、太陽光発電などと組み合わせてBEI≦1.0を確保する必要があります。さらにZEB水準を目指す案件では、目標BEIを基本設計段階から設定し、意匠・構造・設備が一体となった設計プロセスが不可欠です。本記事のチェックリストを設計レビューに組み込み、確実な基準適合を実現してください。

監修者

長谷川一夫

機械設備設計部

パラダイム部長