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水道法・下水道法と設備設計|給排水設計者が押さえるべき法的要件と協議ポイント

水道法・下水道法が設備設計に与える影響を実務目線で解説。クロスコネクション防止、受水槽の管理基準、排水水質基準、合流式・分流式の違い、水道事業者・下水道管理者との協議ポイントまで網羅。

公開日
2026年3月29日
更新日
2026年3月29日

水道法・下水道法はなぜ設備設計者にとって重要か

建築設備の給排水設計は、建築基準法(令129条の2の5)だけでなく、水道法下水道法の要件にも適合する必要があります。これらの法律は、上水の安全性確保と排水による公共水域の水質保全を目的としており、違反した場合は給水の拒否や排水の接続禁止といった重大な影響を受ける可能性があります。

本記事では、設備設計者が実務で押さえるべき水道法・下水道法の要件を体系的に整理し、水道事業者・下水道管理者との協議ポイントまでを解説します。

水道法と給水設備設計

水道法は、清浄で安全な飲料水を供給するための法律です。設備設計に直接関わる規定は、大きく分けて給水装置の技術基準受水槽の管理基準の2つです。

クロスコネクション防止(水道法第16条)

クロスコネクションとは、飲料水の給水系統と他の系統(雑用水・冷温水・消火用水など)が直接接続されることを指します。水道法で厳格に禁止されており、万一発生すると汚染水が飲料水に逆流し、重大な健康被害を引き起こすおそれがあります。

設計時に特に注意すべきポイントは以下のとおりです。

  • 上水配管と雑用水(中水・雨水利用水)配管の完全分離を確認する。配管材質・色分け・ラベリングでの識別を徹底する
  • 空調の補給水ラインなど、間接的な接続も含めて逆流防止装置(逆止弁・バキュームブレーカ等)の設置を計画する
  • 受水槽への給水には、吐水口空間(給水管口径の2倍以上かつ25mm以上)を確保し、逆流を物理的に防止する
  • 雨水利用設備や井水利用設備を導入する場合は、上水系統との切替弁配置を慎重に計画し、バイパス接続が生じないことを確認する

給水装置の技術基準

給水装置(配水管の分岐部から蛇口までの給水管路)は、水道法施行令第6条で技術基準が定められています。設計上の主要な確認事項は以下です。

  • 使用する給水管・継手・弁類は、性能基準適合品(第三者認証品またはJIS規格品)を使用しているか
  • 給水管の口径は、同時使用水量に対して適切な流速(一般に2.0m/s以下)を確保できるサイズか
  • 凍結のおそれのある部分には防凍措置(保温・ヒーター等)が計画されているか
  • 給水装置の工事は指定給水装置工事事業者が施工する旨を設計図書に明記しているか

受水槽の管理基準(簡易専用水道)

有効容量が10㎥を超える受水槽を設置する場合、水道法第34条の2に基づき「簡易専用水道」に該当し、以下の管理義務が生じます。

  • 年1回以上の受水槽清掃の実施
  • 登録検査機関による年1回以上の定期検査の受検
  • 水質の異常(色・濁り・臭い・味)を発見した場合の水質検査と給水停止措置

設計上は、六面点検スペース(上部100cm以上・側面及び下部60cm以上)の確保、マンホールの設置位置、通気管の計画、オーバーフロー管の間接排水接続などが重要な確認事項です。

水道事業者との給水協議のポイント

給水設備の設計には、水道事業者との事前協議が不可欠です。協議で確認すべき主要事項は以下のとおりです。

  1. 配水管の口径・水圧:敷地前面の配水管径と配水圧力を確認し、直結方式の適用可否を判断する
  2. 給水方式の承認:直結直圧・直結増圧・受水槽方式のいずれが認められるか確認する
  3. 量水器の口径・設置位置:メーター口径と設置場所の条件を確認する
  4. 引込管ルート:既設配水管からの分岐位置と敷地内への引込ルートを協議する
  5. 分担金・加入金:口径に応じた水道加入金(数十万〜数百万円)の金額と支払時期を確認する

水道事業者の基準は自治体によって大きく異なります。特に直結増圧方式の適用条件(対応階数・口径上限など)は地域差が大きいため、基本計画の初期段階での協議を強く推奨します。

下水道法と排水設備設計

下水道法は、公共下水道の適正な利用と公共水域の水質保全を目的とした法律です。排水設備設計に関わる主要な規定は、排水水質基準排水方式除害施設の3つです。

排水水質基準

公共下水道に排出する排水は、下水道法施行令第9条の4で定められた水質基準を満たす必要があります。設備設計で特に注意すべき項目は以下です。

  • BOD(生物化学的酸素要求量):600mg/L以下(一般的な基準値。自治体により異なる場合あり)
  • SS(浮遊物質量):600mg/L以下
  • ノルマルヘキサン抽出物質(油分):鉱物油5mg/L以下、動植物油30mg/L以下
  • 水温:45℃未満
  • pH:5を超え9未満

飲食店舗・工場・病院など、特定の用途では上記基準を超過する排水が発生する可能性があるため、除害施設(前処理装置)の設置検討が必要です。また、自治体によっては上乗せ基準が設定されている場合があるため、必ず管轄の下水道管理者に確認してください。

排水方式:合流式と分流式の違い

公共下水道の排水方式には合流式分流式があり、敷地内の排水設備は公共下水道の方式に合わせて設計する必要があります。

  • 合流式:汚水と雨水を同一の管路で処理場に送る方式。敷地内の排水は汚水・雨水ともに公共下水道に接続する
  • 分流式:汚水と雨水を別々の管路で処理する方式。汚水は汚水管へ、雨水は雨水管(または側溝・河川等)へ接続する。雨水を汚水管に接続することはできない

分流式地域では、敷地内の排水系統を汚水系統と雨水系統に完全に分離する必要があります。ルーフドレンからの雨水を誤って汚水管に接続するミスは実務でよく発生するため、排水系統図の段階で確実に区分してください。

除害施設(グリーストラップ等)の設置

排水水質基準を超過するおそれのある排水を排出する施設では、除害施設(前処理装置)の設置が義務づけられます。代表的な除害施設と対象用途は以下のとおりです。

  • グリーストラップ(阻集器):飲食店舗・給食施設の厨房排水に設置。油脂分を分離・回収し、排水中の油分濃度を基準以下に低減する
  • サンドトラップ:駐車場・洗車場の排水に設置。土砂や油分を沈殿・分離する
  • ヘアキャッチャー:美容室・理容室の排水に設置。毛髪の流出を防止する
  • プラスタートラップ:歯科医院の排水に設置。石膏等の固形物を分離する

グリーストラップの容量算定は、ピーク時の排水量と油脂の滞留時間から計算します。テナントビルでは将来の飲食店入居も想定し、あらかじめ厨房排水系統を分離しておくことが設計上のポイントです。

下水道管理者との協議・届出のポイント

排水設備の設計には、下水道管理者との事前協議と工事前の届出が必要です。確認すべき主要事項は以下のとおりです。

  1. 排水方式の確認:敷地が合流式・分流式のどちらの区域に該当するか
  2. 接続先の公共桝の位置・管径:敷地に面する公共下水道の桝の位置と管径を確認する
  3. 排水量・水質の事前申告:大規模施設や特殊用途の場合、計画排水量と排水水質を事前に報告する
  4. 除害施設の設置届:除害施設を設置する場合は、下水道管理者への届出が必要
  5. 排水設備工事の届出:着工前に排水設備設置届(計画確認申請)を下水道管理者に提出する

建築基準法との関連:防火区画貫通処理

給排水配管は水道法・下水道法だけでなく、建築基準法施行令第129条の2の5にも適合する必要があります。特に重要なのが防火区画貫通部の処理です。

  • 給排水配管が防火区画(床・壁)を貫通する箇所には、国土交通大臣認定工法による措置が必要
  • 樹脂管(VP管・架橋ポリエチレン管等)の場合は、熱膨張材を内蔵した貫通処理材を使用する
  • 認定工法の認定番号を設計図面に明記する

よくある見落としポイント

実務で特に見落としやすいポイントをまとめます。確認申請の差し戻しや竣工後のトラブルにつながりやすい項目ですので、注意してください。

  • 雨水利用設備導入時のクロスコネクション:雨水利用水と上水の切替装置で、バイパス管が上水系統と直接接続されていないか確認。吐水口空間または逆流防止装置による縁切りが必須
  • 分流式地域での雨水排水の誤接続:ルーフドレンやエリアドレンからの雨水を汚水系統に接続してしまうミスが多発。排水系統図で色分けによる確認を推奨
  • テナント変更時のグリーストラップ未設置:事務所テナントが飲食店に変更される場合、グリーストラップの後付けが困難なケースがある。設計時にテナント用途変更の可能性も考慮した排水系統計画を行う
  • 受水槽の六面点検スペース不足:意匠設計との調整不足で、受水槽周囲の点検スペースが確保されていないケースがある。基本設計段階で必要スペースを意匠設計者に確実に伝達する
  • 水道加入金の予算計上漏れ:大口径の引込みでは水道加入金が数百万円に達することがある。事業費に計上されていないと後のトラブルにつながるため、早期に金額を確認して施主に報告する

設計チェックリスト

本記事の内容を踏まえた設計チェックリストです。基本設計・実施設計の各段階でご活用ください。

給水設備(水道法関連)

  • クロスコネクション防止措置は全箇所で確認したか
  • 給水装置に性能基準適合品を使用しているか
  • 受水槽を設置する場合、六面点検スペースを確保しているか
  • 水道事業者との給水協議は完了しているか
  • 水道加入金の金額を確認し、施主に報告したか

排水設備(下水道法関連)

  • 排水方式(合流式・分流式)は公共下水道と整合しているか
  • 排水水質基準に適合する計画か(自治体の上乗せ基準を含む)
  • 除害施設(グリーストラップ等)の設置・容量は適切か
  • 下水道管理者への届出準備は完了しているか
  • 配管の防火区画貫通処理は全箇所で計画されているか

まとめ

水道法と下水道法は、給排水設備設計の根幹をなす法律です。水道法ではクロスコネクション防止と受水槽の管理基準、下水道法では排水水質基準と排水方式の遵守が特に重要です。これらに加え、建築基準法の防火区画貫通処理の要件も満たす必要があります。

水道事業者・下水道管理者との協議は基本計画段階の早期に行い、設計条件を確定させることが、円滑な給排水設備設計の鍵です。本記事のチェックリストを活用し、漏れのない設計を行ってください。各項目の詳細な解説は、本ポータルの関連記事をご参照ください。