設備設計ナレッジ

分電盤の設計と回路構成|電灯盤・動力盤の回路分け・ブレーカー選定と設計チェックリスト

分電盤の設計を体系的に解説。電灯盤(単相3線式)と動力盤(三相3線式)の使い分け、用途別の回路分け、配線用遮断器・漏電遮断器・保護協調の選定、配置と増設余裕、設計レビュー用チェックリストまでをまとめました。

分電盤の設計と回路構成|電灯盤・動力盤の回路分け・ブレーカー選定と設計チェックリスト
electrical
公開日
2026年5月7日
更新日
2026年5月8日

分電盤設計が電気品質を左右する理由

分電盤は、幹線から供給された電力を各回路に分配し、ブレーカーによる過電流・漏電保護を行う電気設備の中核です。回路分けの粒度・ブレーカー選定・配置計画の良し悪しは、テナントの使い勝手、メンテナンス性、将来の増設対応、安全性のすべてに影響します。本記事では、電灯盤・動力盤の構成、回路分けとブレーカー選定の考え方、配置計画の要点を実務目線で整理します。

電灯盤と動力盤の基本

分電盤は供給する電源方式により、電灯盤と動力盤に大別されます。負荷の種類と必要電圧から、どちらの盤に接続するかを決定します。

単相3線式(電灯盤)

電灯盤は単相3線式(中性線+2本の電圧線)の電源を供給し、100V/200Vの両方を取り出せる方式です。照明・コンセント・OA機器・小型単相空調などの単相負荷に使用します。L1相とL2相の負荷バランス(電圧不平衡)を取ることが設計上の重要ポイントで、内線規程では不平衡率40%以下を目安とします。極端な偏りは中性線電流の増大、電圧降下、機器寿命の短縮を招きます。

三相3線式(動力盤)

動力盤は三相3線式(200V)の電源を供給し、空調室外機・冷温水ポンプ・給水ポンプ・エレベーターなどのモーター負荷に使用します。三相は単相に比べて同一電力でも電流が小さく、回転磁界が得やすいためモーター駆動に適しています。三相4線式(200V/400V)を採用する大規模施設もあり、その場合は変圧器構成や保護方式の検討も必要になります。

回路構成の考え方

電灯盤の回路分け

電灯盤の回路は、用途を意識して分けるのが基本です。照明回路は1回路あたり15Aまたは20Aで、照明負荷1,000〜1,500Wを目安にまとめます。コンセント回路は20Aが標準で、コンセント5〜6口程度を目安に1回路とします。建物用途・室種別に回路を分けることで、メンテナンス時の停電範囲を限定できます。オフィスではフロアコンセントやOAタップをグリッド単位で計画すると、テナント入替時の対応が容易になります。

動力盤の回路分け

動力盤の回路は、空調機・ポンプ・エレベーターなど機器ごとに専用回路を設けるのが原則です。モーター負荷には始動電流(ダイレクトスタートでは定格電流の5〜7倍)が流れるため、ブレーカーの瞬時引外し特性に注意します。インバーター駆動機(VRF室外機・インバーターポンプ等)は始動電流が小さく、定格電流に近い容量で計画できます。

専用回路と非常用回路

サーバー・大型複合機・厨房機器・電気自動車充電など消費電力の大きい機器は専用回路とし、他回路への影響を切り離します。消防負荷(排煙ファン・非常用エレベーター・スプリンクラーポンプなど)は専用回路かつ非常電源系統に接続し、停電時にも自動的に給電が継続される設計とします。専用回路の表示・銘板を盤内に明記することは、将来の改修・点検でも重要です。

ブレーカー選定の基本

配線用遮断器(MCCB)の選定

配線用遮断器(MCCB)の定格電流は、回路の許容電流以下かつ負荷電流以上で選定します。具体的には、電線の許容電流(VVF・CVケーブルのサイズ別)と、負荷の合計電流(需要率を考慮)の間に収めます。モーター回路では始動電流で誤って瞬時引外しせず、定常運転時の過電流で確実に遮断する瞬時引外し特性(M型・D型カーブ)の機種を選びます。

漏電遮断器(ELCB)の選定

電気設備技術基準により、住宅・テナント区画・水気のある場所など多くの回路で漏電遮断器の設置が義務づけられています。一般用は感度電流30mA、動作時間0.1秒以下が標準です。誤動作時の影響を避けたい医療機器などは専用の高感度ELCBを採用し、影響範囲を局所化します。インバーター機器の漏れ電流(高調波成分)が大きい場合は、誤動作対策の高調波対応型ELCBを検討します。

保護協調

主幹ブレーカーと分岐ブレーカーの保護協調は、下位(負荷側)が先に動作し、上位(電源側)はバックアップとして動作する関係(カスケード保護)で計画します。電流協調と時間協調の2つの観点で、メーカーのタイムカレントカーブを重ねて確認します。協調が取れていないと、1回路の事故で建物全体が停電する事態を招くため、設計段階で必ず確認します。

分電盤の配置計画

位置選定とEPS

分電盤は各階のEPS(電気シャフト)内または電気室に設置するのが標準です。負荷の中心に近い位置を選ぶことで、配線長と電圧降下を抑えられます。電圧降下は分岐回路で2%以内、幹線+分岐の合計で4%以内を目安に計画します。

増設余裕の考え方

将来の負荷増設・テナント変更に備え、予備回路スペースを30%程度確保するのが一般的です。物理的な盤スペースだけでなく、ブレーカー定格電流の増加余地、ケーブルラック・EPSの容量、変圧器・受電容量との整合も併せて見直します。

メンテナンススペースとテナント対応

盤前面には保守用の操作スペース(一般に1m以上)を確保し、扉開閉の妨げになる障害物を置かない計画とします。テナントビルでは分電盤の分割単位をテナント区画に合わせ、入替時に他テナントを停電させずに作業できる構成にします。検針・点検・改修工事の動線も忘れず確認します。

分電盤設計の実務フロー

分電盤設計は次の流れで進めるのが効率的です。第1に、各室・各テナントの負荷一覧(照明・コンセント・OA・空調・特殊機器)を作成し、それぞれの定格電流を算出します。第2に、用途・電源方式から電灯盤・動力盤を区分し、必要な盤数を決定します。第3に、回路分けの方針(用途別・グリッド別・専用回路)を決め、各回路の負荷をブレーカー定格に収まる範囲で割り付けます。第4に、各分岐ブレーカーと主幹ブレーカーを選定し、保護協調を確認します。第5に、分電盤の配置(EPS位置)、必要な盤寸法、増設余裕、メンテナンス空間を意匠・構造と調整します。最後に、単線結線図・盤姿図・回路表に仕様を明記し、設計図書を整備します。

設計レビュー用チェックリスト

設計レビューで確認すべき項目を整理しました。

□ 各室・各テナントの負荷一覧が作成され、定格電流が算出されているか

□ 単相負荷と三相負荷を電灯盤・動力盤に正しく振り分けたか

□ 単相3線式の不平衡率が40%以下に収まっているか

□ 照明回路(15/20A、1,000〜1,500W目安)の回路分けが適切か

□ コンセント回路(20A、5〜6口目安)の粒度が適切か

□ サーバー・大型機器の専用回路が確保されているか

□ 消防負荷が専用回路かつ非常電源系統に接続されているか

□ MCCBの定格電流が電線許容電流以下・負荷電流以上で選定されているか

□ モーター回路で始動電流に対する瞬時引外し特性が考慮されているか

□ 漏電遮断器(30mA、0.1秒)が必要回路に設置されているか

□ 主幹と分岐の保護協調(時間・電流)が確認されているか

□ 電圧降下が分岐2%・合計4%以内に収まっているか

□ 予備回路スペース30%程度と盤前面1m以上のメンテ空間が確保されているか

まとめ

分電盤の設計は、電灯盤(単相3線式)と動力盤(三相3線式)の区分、用途別の回路分け、ブレーカー選定(MCCB・ELCB・保護協調)、配置と増設余裕の確保という流れで構成されます。単相負荷の不平衡管理、モーター回路の始動電流対応、漏電遮断器の感度設定、保護協調の確認は、安全性と運用性を左右する重要ポイントです。本記事のチェックリストを設計レビューに組み込み、柔軟で安全な分電盤設計を実現してください。

監修者

猪狩理

設備設計士

パラダイム部長

あわせて読む

受変電設備の容量計算|需要率・力率・負荷率から変圧器容量と受電方式を決める手順
electrical

受変電設備の容量計算|需要率・力率・負荷率から変圧器容量と受電方式を決める手順

受変電設備の容量計算を体系的に解説。設備容量の積み上げ、需要率・力率・変圧器負荷率の適用、電灯・動力バンク分離、油入式/モールド式の選定、進相コンデンサによる力率改善、受電方式と契約電力、電気室のスペース計画、設計レビュー用チェックリストまでをまとめました。

記事を読む2026年5月9日
幹線設計と電圧降下計算|ケーブル選定・許容値・超過時の対策と設計チェックリスト
electrical

幹線設計と電圧降下計算|ケーブル選定・許容値・超過時の対策と設計チェックリスト

幹線設計の基本を体系的に解説。低圧幹線ケーブル(CV・CVT等)の種類と許容電流の補正係数、単相3線式・三相3線式の電流計算と需要率、内線規程の電圧降下許容値(幹線3%・合計5%)、詳細式とインピーダンスを無視した簡略式(35.6・17.8・30.8)、超過時の対策(ケーブル拡大・電圧階級見直し・EPS配置)、設計レビュー用チェックリストまでをまとめました。

記事を読む2026年5月8日
照明設計の基本|照度基準・光束法による灯数計算とLED選定・器具配置の実務
electrical

照明設計の基本|照度基準・光束法による灯数計算とLED選定・器具配置の実務

照明設計の基本を体系的に解説。JIS照度基準と用途別の目安、光束法による灯数計算(室指数・照明率・保守率)、LED光源の色温度・演色性・グレア(UGR)制御、調光・センサーによる省エネ制御、器具配置の実務、設計レビュー用チェックリストまでをまとめました。

記事を読む2026年5月7日