幹線サイズは許容電流と電圧降下の両方で決める
幹線は、受変電設備や引込点から分電盤等へ電力を送る配線です。電圧降下計算で選んだ断面積だけでは、ケーブルの選定は完了しません。負荷電流を安全に流せること、末端機器の電圧を確保できること、短絡時の保護や施工条件が成立することを確認します。
電圧降下は電線の抵抗・リアクタンスにより負荷側の電圧が低くなる現象です。同じ電流・電気方式では配線が長いほど増え、抵抗分については導体断面積を大きくすると減らせます。許容値は受電条件と電源から末端までの長さによって異なります。
負荷電流の計算|入力kWと出力kWを区別する
電気方式・入力条件 | 電流の基本式 | 注意点 |
|---|---|---|
単相2線・電気入力P(kW) | I=1,000P÷(V×PF) | Vは対象2線間の電圧 |
三相3線・平衡負荷・電気入力P(kW) | I=1,000P÷(√3×V×PF) | Vは線間電圧 |
電動機の軸出力Pout(kW) | 三相ならI=1,000Pout÷(√3×V×PF×η) | ηは効率。電気入力に重ねて効率を適用しない |
単相3線100/200V | 100V負荷をL1側・L2側ごとに集計し、200V負荷も加える | 線ごとの電流と中性線、不平衡を確認 |
Iは電流A、PFは力率、ηは効率です。kWをWに直すため1,000を掛けます。例えば電気入力30kW、三相200V、力率0.90の平衡負荷なら、I=30,000÷(√3×200×0.90)≒96.2Aです。機器の定格電流やメーカーの選定資料がある場合は、それらと照合します。
単相3線では、100V負荷と200V負荷、相間の不平衡を分けて扱います。例えば力率1で、L1側100V負荷4kW、L2側2kW、200V負荷2kWなら、L1は40+10=50A、L2は20+10=30Aです。合計8kWを200Vで割った40Aだけでは最大の線電流を表せません。
需要率を用いる範囲やピークの非同時性は、需要率・不等率と受変電容量の計算を参照してください。需要率を見込んだ通常負荷の計算とは別に、電動機負荷の幹線・保護装置の選定条件も確認します。
電圧降下の簡略式|35.6・17.8・30.8の使い分け
以下は銅導体の抵抗を用いた簡略計算です。Lは片道の配線長m、Iは電流A、Sは導体断面積mm²、eは電圧降下Vです。往復分は係数に含まれるため、単相2線でもLを二重にしません。
電気方式 | 簡略式 | 電圧降下率の基準 |
|---|---|---|
単相2線 | e=35.6×L×I÷(1,000×S) | 対象2線間の電圧 |
単相3線・平衡時 | e=17.8×L×I÷(1,000×S) | 線−中性線間の電圧。100/200Vなら100V |
三相3線・平衡時 | e=30.8×L×I÷(1,000×S) | 線間電圧。三相200Vなら200V |
電圧降下率はe÷基準電圧×100です。この簡略式は抵抗率を一定とし、リアクタンスや力率・温度による影響を個別に扱っていません。アルミ導体、不平衡が大きい単相3線、始動時、太いケーブルなどを同じ係数だけで判断しないようにします。
計算例:三相200V・60A・100m
平衡負荷、銅導体、片道100m、電流60Aを説明用条件とします。38mm²の場合、e=30.8×100×60÷(1,000×38)≒4.86V、電圧降下率は4.86÷200×100≒2.43%です。
導体断面積 | 簡略式による電圧降下 | 200Vに対する割合 |
|---|---|---|
22mm² | 約8.40V | 約4.20% |
38mm² | 約4.86V | 約2.43% |
60mm² | 約3.08V | 約1.54% |
仮にこの区間の設計目標を2%とすれば、簡略計算では60mm²が候補になります。ただし、この2%は本例で設定した区間目標です。受電条件、他の区間の電圧降下、機器側の許容電圧、補正後の許容電流を確認して最終選定します。
抵抗R・リアクタンスXを使う計算
平衡した交流回路の通常運転時には、e≒K×I×L×(Rcosφ+Xsinφ)で電圧降下を検討します。Kは単相2線で2、単相3線の線−中性線間で1、三相3線の線間で√3です。R・XをΩ/kmで使う場合、Lはkmにそろえます。
Rは導体温度、Xは周波数・ケーブル構造・布設配置の影響を受けます。フジクラ・ダイヤケーブルの電圧降下資料には電気方式別の係数と、ケーブルごとの電気定数表があります。
同社の例は、三相200V、40A、100m、50Hz、力率0.85、CVT38mm²で、R=0.626Ω/km、X=0.0955Ω/kmを使用し、電圧降下を約4.0Vとしています。簡略式と同じ結果になるとは限らないため、採用した電気定数の温度・周波数・布設条件を計算書に残します。
電圧降下の許容値|受電条件と配線長で分ける
「幹線3%・末端まで5%」を全ての回路へ一律に適用するのは適切ではありません。フジクラ・ダイヤケーブルが掲載する内線規程1310節の表では、次のように整理されています。Ltotalは供給変圧器の二次端子または引込線取付点から、最遠端負荷までの電線のこう長です。
Ltotal | 使用場所内の変圧器から供給 | 電気事業者から低圧で受電 |
|---|---|---|
60m以下 | 幹線3%以下・分岐回路2%以下 | 幹線2%以下・分岐回路2%以下 |
60m超〜120m以下 | 合計5%以下 | 合計4%以下 |
120m超〜200m以下 | 合計6%以下 | 合計5%以下 |
200m超 | 合計7%以下 | 合計6%以下 |
60m以下の行は幹線と分岐の値、それより長い行は合計値を示しています。長い幹線1本だけの長さと読み替えず、基点から負荷までで判定します。内線規程は民間規程であり、法令、契約仕様、機器の電圧条件とあわせて採用版の本文・注記を確認します。始動時や精密機器では、通常運転の上表だけでは足りない場合があります。
許容電流・保護装置とケーブルの選定
CV・CVT・EM系ケーブルの許容電流は、心数、絶縁材料、布設方法、周囲温度、集合状態などによって変わります。基底温度や補正係数は参照表ごとに確認し、全てのケーブルを「周囲30℃基準」と扱わないようにします。
選定に使う表と補正計算はCV・CVTケーブルの許容電流早見表に整理しています。電圧降下で得た候補について、負荷電流、過電流保護、電動機の始動、短絡耐量・遮断容量、端子の接続範囲を確認します。非常用回路は必要な耐火・耐熱性能と認定仕様を別途確認します。
幹線計算ツールでできること
幹線計算シミュレーションでは、負荷・電圧・力率・効率・距離・許容電圧降下などを入力し、電流と断面積ごとの電圧降下を比較できます。単相3線の電圧降下は線−中性線間で評価する表示になっています。
三相400V、負荷80kW、力率0.90、効率0.95、距離60m、銅、温度補正1、許容電圧降下3%の表示例では、概算電流135.1A、推奨断面積22mm²、電圧降下2.79%です。この「推奨」は電圧降下からの候補で、135.1Aに対する許容電流の適合を意味しません。画面の注意事項にあるとおり、20℃基準の抵抗による概算です。
電気入力kWを用いるときに効率で二重補正していないか、温度補正が何を補正する値か、負荷の平衡条件が成立するかも確認します。高調波や不平衡を詳細に解析した結果として扱わないようにします。
超過したときの対策と設計の流れ
- ケーブルを太くする:電圧降下と許容電流を再計算し、端子・管路・曲げ半径も確認する。
- 配線を短くする:EPSや分電盤の位置を見直し、分岐回路も含めて評価する。
- 供給方式を見直す:同じ電力なら高い電圧で電流を抑えられるが、機器・絶縁・接地を含めて設計する。
- 始動方式や負荷の分け方を見直す:通常運転と始動時の条件を分けて確認する。
単線結線図に区間ごとの電圧、負荷電流、配線長、ケーブル、保護装置を記入し、末端までの電圧降下を集計します。分岐側は分電盤・回路構成の設計と整合させます。
参考資料
資料・ツール表示確認日:2026年9月11日。自作の数値例は記載条件での概算です。内線規程の許容値はメーカー掲載資料を参照しており、採用する版の原文と機器条件を最終確認してください。
監修者
猪狩理
設備設計士
パラダイム部長



