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幹線設計と電圧降下計算|ケーブル選定・許容値・超過時の対策と設計チェックリスト

幹線設計の基本を体系的に解説。低圧幹線ケーブル(CV・CVT等)の種類と許容電流の補正係数、単相3線式・三相3線式の電流計算と需要率、内線規程の電圧降下許容値(幹線3%・合計5%)、詳細式とインピーダンスを無視した簡略式(35.6・17.8・30.8)、超過時の対策(ケーブル拡大・電圧階級見直し・EPS配置)、設計レビュー用チェックリストまでをまとめました。

幹線設計と電圧降下計算|ケーブル選定・許容値・超過時の対策と設計チェックリスト
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公開日
2026年5月8日
更新日
2026年5月8日

幹線設計の役割と設計目標

幹線は受変電設備(または引込点)から各階の分電盤まで電力を供給する電気設備の大動脈です。幹線サイズが不足すれば過熱による絶縁劣化・火災リスクや電圧降下による機器の誤動作を招き、過大に設計すればコストとEPSスペースの無駄になります。設計目標は、許容電流・電圧降下・短絡電流・将来増設の4軸で過不足のないバランスを取り、保守性も含めて最適化することです。本記事では、ケーブル種類の選定、負荷電流の算出、電圧降下計算と許容値、超過時の対策までを実務目線で整理します。

幹線ケーブルの種類と許容電流

ケーブルの種類

低圧幹線では、CV(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)、CVT(CVの単心3本撚り合わせ)、環境配慮型のEM-CEなどが主流です。CVTは放熱性が良く許容電流が高いため、大容量幹線で広く使われます。耐火・耐熱性能が要求される消防用・非常用回路ではFP・FR系の耐火・耐熱ケーブルを採用します。バスダクトは大容量・短距離幹線(受変電直近など)に有効で、許容電流2,000〜4,000Aクラスまで対応します。

許容電流と補正係数

ケーブルの許容電流は、内線規程または製造者カタログの「基本許容電流」(周囲温度30℃、空中布設、隣接ケーブル無し)に対して、布設条件に応じた補正係数を掛けて求めます。主な補正要素は周囲温度(35℃で約0.94、40℃で約0.87)、布設方法(直埋設・電線管・ラック)、隣接ケーブル数(多条布設での減衰)です。EPS内に多数のケーブルを束ねる場合は補正後の許容電流が大きく低下するため、初期検討の段階で見落とさないよう注意します。

負荷電流の算出

単相3線式

単相3線式(100V/200V)の負荷電流は、I=P÷V で求めます。100V回路は中性線と電圧線間、200V回路は電圧線間で電圧を取ります。回路の最大電流(L1相とL2相のうち大きい方)を基準にケーブルを選定し、不平衡率40%以下を維持できるよう負荷を振り分けます。

三相3線式

三相3線式(200V)の負荷電流は、I=P÷(√3×V×cosθ)で求めます。力率cosθはモーター負荷で0.8〜0.85、照明・OA中心の負荷では0.9以上が目安です。インバーター負荷では高調波の影響で見かけの皮相電流が増えるため、ケーブル選定時は実効値・皮相値の双方を確認します。

需要率の適用

各分電盤の合計負荷をそのまま幹線サイズに反映すると過大設計になるため、需要率(実際に同時使用される負荷の割合)と不等率(複数フロアのピーク非同時性)を適用します。事務所の照明・コンセントは需要率0.5〜0.7、空調機は0.7〜0.9程度が目安です。負荷種別ごとに適切な需要率を当てはめ、合計したものを幹線設計電流とします。

電圧降下計算と許容値

内線規程の許容値

内線規程では、電源側からの電圧降下の許容値を、幹線で原則3%以内、分岐回路を含む末端まで5%以内と定めています。ただしこれは内線規程の標準値であり、長距離・大容量・精密機器が多い場合などは独自の運用基準(幹線2%、合計4%など)を設けるケースもあります。電圧降下の超過は照明のちらつき、モーターのトルク低下、精密機器の誤動作の原因となります。

詳細式(インピーダンス考慮)

リアクタンスを含めた詳細式は次のとおりです。単相2線式(電圧線間) e=2×I×(R×cosθ+X×sinθ)×L、単相3線式(中性線基準) e=I×(R×cosθ+X×sinθ)×L、三相3線式 e=√3×I×(R×cosθ+X×sinθ)×L。Iは電流(A)、R・Xはケーブルの抵抗・リアクタンス(Ω/km)、cosθ・sinθは力率と位相、Lはケーブル長(km)です。電圧降下率(%)=e÷定格電圧×100で評価します。

簡略式(35.6・17.8・30.8)

リアクタンスを無視した簡略式は実務でよく用いられます。単相2線式 e=35.6×L×I÷(1000×A)、単相3線式 e=17.8×L×I÷(1000×A)、三相3線式 e=30.8×L×I÷(1000×A)。Aは導体断面積(mm²)、Lはケーブル長(m)、Iは電流(A)です。係数35.6・17.8・30.8は銅導体の抵抗率に基づく値で、概算検討に十分な精度を持ちます。

許容値を超える場合の対策

ケーブル拡大とルート短縮

最も直接的な対策はケーブル断面積の拡大です。断面積を上げると抵抗が下がり、電圧降下が比例的に減少します。ただしEPS容量・端子接続・コストへの影響を確認します。ルート短縮(迂回経路の見直し、シャフト位置変更)も有効で、ケーブル長が直接電圧降下に効くため効果が大きい対策です。

電圧階級の見直し

供給電圧を上げると、同一電力でも電流が小さくなり電圧降下率が大幅に低減します。三相200V→三相400V、または高圧引込点を負荷側に近づけて低圧側のケーブル長を短くする手法が代表的です。大規模建物・データセンター・工場では400V幹線の採用が一般化しています。

EPS配置と分電盤分散

高層建物では電気シャフト(EPS)の位置が電圧降下に大きく影響します。建物中央付近にEPSを設けてケーブル長を最小化する、または各エリアごとに分電盤を分散配置して亜幹線を短くするのが基本です。シャフト位置の変更は意匠・構造との調整が必要なため、基本計画段階で電気設備計画と整合させます。

幹線設計の実務フロー

幹線設計は次の流れで進めます。第1に、受変電設備から末端負荷までの単線結線図を作成し、各分電盤の負荷一覧と需要率を整理します。第2に、各セクションの設計電流を算出し、ケーブル種類と仮サイズを選定します。第3に、布設条件に応じた補正係数を適用し、許容電流が設計電流以上となることを確認します。第4に、電圧降下計算(簡略式または詳細式)を実施し、幹線3%・合計5%以内に収まることを検証します。第5に、超過時はケーブル拡大・ルート短縮・電圧階級見直しなどの対策を実施し、再計算します。第6に、短絡電流計算でブレーカーの遮断容量との整合を確認し、保護協調を取ります。最後に、単線結線図・幹線系統図・幹線サイズ表に仕様を明記し、設計図書を整備します。

設計レビュー用チェックリスト

幹線設計で確認すべき項目を整理しました。

□ 単線結線図と各分電盤の負荷一覧が作成されているか

□ 需要率・不等率が負荷種別に応じて適切に適用されているか

□ 単相3線式・三相3線式の電流計算式が正しく使われているか

□ ケーブル種類(CV・CVT・耐火/耐熱)が用途に合わせて選定されているか

□ 許容電流が補正係数(温度・布設・多条)を反映した値で評価されているか

□ 内線規程の許容値(幹線3%・末端5%)と整合した電圧降下計算が実施されているか

□ 簡略式または詳細式での計算書が残っているか

□ 超過回路で対策(拡大・短縮・電圧階級・分散)が検討されているか

□ 高層建物でEPS配置が電圧降下を抑える計画になっているか

□ インバーター負荷など高調波の影響が考慮されているか

□ 短絡電流計算とブレーカー遮断容量・保護協調が確認されているか

□ 将来増設用の容量余裕(30%程度)が幹線・盤・EPSで確保されているか

まとめ

幹線設計は、ケーブル種類選定、負荷電流の算出、許容電流(補正後)の確認、電圧降下の検証、超過時の対策という流れで構成されます。電圧降下は幹線3%・合計5%を基本許容値とし、超過時はケーブル拡大・ルート短縮・電圧階級見直し・EPS配置最適化を組み合わせて解決します。短絡容量・保護協調・将来増設まで含めた多軸の最適化が、安全で経済的な幹線設計のポイントです。当ポータルの電圧降下計算シミュレーションツールもぜひご活用ください。

監修者

猪狩理

設備設計士

パラダイム部長

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