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受変電設備の容量計算|需要率・力率・負荷率から変圧器容量と受電方式を決める手順

受変電設備の容量計算を体系的に解説。設備容量の積み上げ、需要率・力率・変圧器負荷率の適用、電灯・動力バンク分離、油入式/モールド式の選定、進相コンデンサによる力率改善、受電方式と契約電力、電気室のスペース計画、設計レビュー用チェックリストまでをまとめました。

受変電設備の容量計算|需要率・力率・負荷率から変圧器容量と受電方式を決める手順
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公開日
2026年5月9日
更新日
2026年5月10日

受変電設備の役割と容量計算の意義

受変電設備は、電力会社から供給される高圧電力(6,600Vまたは22,000V)を建物内で使用する低圧(100V/200V)に変換するための中核設備です。変圧器容量の算定は電気設備設計の出発点であり、この値が受電方式・電気室スペース・幹線サイズ・非常用発電機の容量にまで波及します。過大に見積もれば電気室面積とコストが膨らみ、過小なら容量不足や将来の増設で再投資を強いられます。本記事では、需要率・力率・負荷率から変圧器容量を決定する手順、機種選定、電気室計画、電力会社協議までを実務目線で整理します。

容量計算の基本手順

設備容量の積み上げ

まず建物内の全負荷設備を積み上げます。照明・コンセント・OA機器などの電灯負荷と、空調機・ポンプ・エレベーターなどの動力負荷を分けて算出するのが基本です。初期検討段階では、用途別の単位面積あたり電力密度(VA/㎡)を用いる概算手法が便利です。一般オフィスは60〜80VA/㎡、商業施設は80〜120VA/㎡、ホテルは50〜80VA/㎡、病院は40〜70VA/㎡程度が目安です。これらは概算値であり、機器表が固まった段階で詳細計算に置き換えます。

需要率の適用

全ての負荷が同時に最大出力で運転することはないため、設備容量の合計に需要率を乗じて最大需要電力を算出します。需要率は負荷種別によって異なり、照明負荷は0.7〜0.9、コンセント負荷は0.3〜0.5、空調動力は0.8〜1.0、ポンプ類は0.6〜0.8、エレベーターは0.5〜0.7程度が一般的な目安です。複数フロアでは不等率(ピーク非同時性)も加味し、類似建物の実績値を参考に建物特性に合った値を設定します。

力率と変圧器負荷率

力率(cosθ)は皮相電力に対する有効電力の割合で、総合負荷では0.85〜0.9程度を想定します。変圧器負荷率(最大需要電力÷変圧器定格容量)は0.75〜0.85を目標とし、低すぎると無負荷損の割合が増えて電力損失が大きくなり、高すぎると過負荷時の余裕が不足します。設計値はこの範囲に収まるよう機種選定を調整します。

変圧器容量の決定

最大需要電力から変圧器容量を決定します。変圧器容量(kVA)=最大需要電力(kW)÷力率÷変圧器負荷率 で算出し、規格値(50・75・100・150・200・300・500・750・1,000kVA など)から選定します。電灯用と動力用は別バンクとするのが一般的で、それぞれの最大需要電力から個別に容量を求めます。負荷規模が大きい場合は1バンクを複数台に分割し、並列運転で予備機能を持たせる構成も検討します。

変圧器の機種選定と構成

電灯バンクと動力バンクの分離

電灯バンク(単相3線式100V/200V)と動力バンク(三相3線式200V)は、電源方式が異なるため別の変圧器を設けます。これにより不平衡負荷の影響を分離でき、保護協調や将来の増設対応も容易になります。テナント数が多い建物では、テナント単位で動力系統を分けるなど運用面を意識したバンク構成も検討します。

油入式とモールド式の選定

低圧変圧器の主流は油入式とモールド式(樹脂モールド)です。油入式は安価で大容量に対応し、屋外設置も可能ですが、油漏れや火災時の対策(防油堤・耐火区画)が必要です。モールド式は不燃・難燃で屋内設置に適し、メンテナンスが少なく、近年は商業ビル・高層ビルで主流となっています。設置場所・規模・防火要求からどちらを採用するかを決定します。

進相コンデンサによる力率改善

電動機・蛍光灯・インバーターなど誘導性負荷が多い建物では力率が低下し、電力損失と契約電力の増加を招きます。進相コンデンサ(高圧側または低圧側)を設置して力率0.95以上に改善するのが一般的です。電力会社との契約上、力率0.85以上で割引(力率割引)が受けられるため、改善はランニングコスト面でも有効です。インバーター負荷が多い場合は高調波対策として直列リアクトル付きコンデンサを採用します。

受電方式と契約電力

受電方式は契約電力によって決まります。契約電力50kW未満は低圧受電(100V/200V)で、変圧器は電力会社が設置します。50kW以上2,000kW未満は高圧受電(6,600V)で、建物側でキュービクル式高圧受変電設備(KMP)を設置します。2,000kW以上は特別高圧受電(22,000Vまたは66,000V)で、専用の特別高圧受電室と保護継電器が必要です。一般的なオフィスビル・商業施設では高圧受電が主流で、キュービクル形が標準です。受電方式が決まると、引込ルート・電力会社との協議内容・電気室の規模が連動して決まります。

電気室のスペース計画

面積と配置

電気室の面積は変圧器容量と台数により異なりますが、目安として変圧器容量100kVAあたり約15〜20㎡を見込みます。電気室は原則として1階または地下1階に設置し、外壁に接する位置で電力会社からの引込ルートが確保しやすい場所が望ましいです。地下水位や浸水リスクに配慮し、止水措置と排水計画も併せて検討します。

搬入動線・換気・将来増設

機器の搬入経路(廊下幅、扉開口、エレベーター容量)を計画初期に確認します。変圧器の発熱処理のため、自然換気または機械換気で十分な換気量を確保します(変圧器発熱の約3〜5%を目安に計算)。将来増設に備え、20〜30%のスペース余裕を確保し、増設用の床荷重・搬入ルート・配線ピットも事前に見込んでおくと、後の改修工事が容易になります。

実務での協議と注意点

容量計算では過大設計と過小設計の両方を避ける必要があります。需要率を保守的に高く設定しすぎると変圧器容量が過大になり、電気室面積・初期コスト・無負荷損が増えます。逆に小さすぎれば容量不足や将来増設のリスクとなります。受電方式・契約電力・引込ルートは基本計画段階で電力会社と協議を開始します。特別高圧受電では専用受電室の規模・引込線路・保護継電器の協議に時間がかかるため、早期確認が不可欠です。EV充電設備の導入やテナント入替に伴う電力需要の変化に備え、変圧器容量と電気室スペースに20〜30%の余裕を見込んでおくのが一般的です。将来の増容量の可能性がある場合は、電力会社にその旨を伝えておくことも重要です。

受変電設計の実務フロー

受変電設計は次の流れで進めます。第1に、建物用途・規模・室構成から負荷一覧を作成し、電力密度の概算で初期容量を試算します。第2に、機器表が固まった段階で需要率・不等率・力率を適用し、最大需要電力を算出します。第3に、変圧器負荷率0.75〜0.85を目標に変圧器容量を決定し、電灯バンク・動力バンクを分けて規格値で選定します。第4に、契約電力から受電方式(低圧/高圧/特別高圧)を確定し、電力会社と引込ルート・契約条件を協議します。第5に、進相コンデンサ・高調波対策・保護継電器・避雷器を含む単線結線図を作成します。第6に、電気室の面積・配置・搬入動線・換気・将来増設余裕を意匠・構造と調整します。最後に、容量計算書・単線結線図・キュービクル仕様書を整備します。

設計レビュー用チェックリスト

受変電設計で確認すべき項目を整理しました。

□ 電灯負荷・動力負荷が分けて積算され、用途別の電力密度と整合しているか

□ 需要率・不等率が負荷種別と建物特性に応じて設定されているか

□ 総合力率0.85〜0.9を想定し、最大需要電力が正しく算出されているか

□ 変圧器負荷率0.75〜0.85の範囲で機種選定されているか

□ 電灯バンクと動力バンクが分離され、規格値で容量が選定されているか

□ 油入式/モールド式が設置場所・防火要求から適切に選定されているか

□ 進相コンデンサで力率0.95以上に改善する計画になっているか

□ 高調波負荷が多い場合、直列リアクトル付きコンデンサが採用されているか

□ 契約電力と受電方式(低圧/高圧/特別高圧)が整合しているか

□ 電力会社との引込・契約協議が基本計画段階で開始されているか

□ 電気室の面積(100kVAあたり15〜20㎡)と搬入動線・換気が確保されているか

□ 将来増設余裕(変圧器・電気室で20〜30%)が見込まれているか

まとめ

受変電設備の容量計算は、設備容量の積み上げ→需要率・不等率の適用→力率と負荷率の設定→変圧器容量の決定という流れで進めます。電灯/動力のバンク分離、油入式/モールド式の選定、進相コンデンサによる力率改善まで含めて機種を確定し、契約電力に応じた受電方式と電気室の面積・搬入・換気・将来増設を整合させることが重要です。基本計画段階での電力会社協議と、過大設計・過小設計を避ける適切な需要率設定が、合理的な電気設備設計の第一歩です。

監修者

猪狩理

設備設計士

パラダイム部長

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