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受変電設備の容量計算|需要率・不等率・負荷率の違いと変圧器の選定例

需要率・不等率・負荷率・力率を比較し、負荷の積み上げから変圧器容量を求める手順を解説。kWとkVA、将来余裕の扱い、バンク分け、受電方式、電気室の換気・更新経路まで、計算例と出典付きで整理します。

受変電設備の容量計算|需要率・力率・負荷率から変圧器容量と受電方式を決める手順
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公開日
2026年5月10日
更新日
2026年9月11日

変圧器容量は「最大需要電力÷力率」から検討する

受変電設備の容量計算では、負荷機器の電気入力を整理し、同時に発生する最大需要電力を見積もってから、変圧器が供給する皮相電力に換算します。基本は必要皮相電力S(kVA)=最大需要電力P(kW)÷力率PFです。この値に将来計画、運転条件、標準容量などを反映して機種を選びます。

需要率は設備容量に対するピークの割合、不等率は複数負荷のピーク時刻のずれ、負荷率は期間平均とピークの関係です。これらを同じ意味の「余裕係数」として重ねると、容量を過小・過大に見積もる原因になります。

需要率・不等率・負荷率・力率の違い

用語

定義・基本式

容量計算での使い方

需要率d

最大需要電力÷設備容量(同じkW基準)

設備容量×dで対象範囲のピークを見積もる

不等率D

個別の最大需要電力の合計÷合成最大需要電力

個別ピークの合計をDで割る。Dは1以上

負荷率LF

ある期間の平均需要電力÷同じ期間の最大需要電力

電力の使われ方を示す。変圧器容量を割り引く係数にはしない

力率PF

有効電力P(kW)÷皮相電力S(kVA)

P÷PFで必要kVAに換算する

変圧器の容量使用割合k

負荷の皮相電力(kVA)÷定格容量(kVA)

選定容量に対する使用状況を確認。上記の負荷率LFと区別する

需要率・不等率・負荷率の定義は日本電気技術者協会の解説を参照しています。割合を計算に入れる際、70%は0.70とします。式の分子と分母を同じ範囲・期間・単位にそろえてください。

負荷表を作る|kW・kVA・電動機出力を区別する

負荷一覧には機器名、台数、電気入力、電圧・相数、力率、運転時間、同時運転の条件を記入します。照明・コンセントと空調・ポンプなどを整理し、最終的には実際の変圧器バンクごとに集計します。

電動機の軸出力kWを使う場合は、効率で割って電気入力へ換算します。銘板や仕様書に電気入力が示されている場合は、効率を重ねて適用しません。kVAで示された負荷を、kWの負荷表に無換算で足すことも避けます。

面積原単位による概算では、W/m²かVA/m²か、空調・厨房・医療機器・EV充電器等を含む値かを明記します。類似建物の原単位は、対象負荷と運用条件が違えばそのまま使えません。機器表が固まったら積み上げ計算に置き換えます。

計算例|設備容量240kWから必要容量を求める

以下は計算手順を示す架空の負荷群です。需要率は説明用の仮定で、用途別の標準値ではありません。各群のピークが同時に起こるものとして、不等率は1とします。

負荷群

設備容量(電気入力)

仮定した需要率

最大需要電力

A

80kW

75%

60kW

B

120kW

80%

96kW

C

40kW

60%

24kW

合計

240kW

総合では75%

180kW

  1. 合成最大需要電力:60+96+24=180kW。
  2. ピーク時の総合力率を0.90と仮定:S=180÷0.90=200kVA。
  3. 同じ負荷構成で20%増える計画なら:200×1.20=240kVA。
  4. 候補機種の定格容量、温度条件、始動・突入電流、保護装置との整合を確認する。

仮に候補を300kVAとすれば、現在の容量使用割合は200÷300≒66.7%、計画増設後は240÷300=80%です。300kVAという合計だけで決定せず、単相・三相、電圧、バンク分けごとに成立を確認します。ここでの20%は具体的な増設想定であり、一律に必要な余裕率ではありません。

「20%上乗せ」と「使用割合80%」は同じではない

200kVAに20%を上乗せすると240kVAです。一方、現在の負荷200kVAを定格容量の80%以内に抑えるなら、200÷0.80=250kVAが計算上の必要容量です。両方を使う場合は、増設分と運転余裕など、目的が重複していないか確認します。

不等率は掛けずに割る

別の例として、個別ピークが120kWと80kW、合成ピークが160kWなら、不等率D=(120+80)÷160=1.25です。合成最大需要電力は200÷1.25=160kWになります。各設備群に需要率を適用しただけで、建物全体のピークのずれまで評価済みかどうかは、採用したデータの範囲によります。実測ピークにさらに同じ非同時性を見込まないようにします。

負荷率は期間の電力量から確認する

30日間・720時間の電力量が64,800kWh、同期間の最大需要電力が180kWなら、平均需要電力は90kW、負荷率は90÷180=50%です。この50%を変圧器容量の算定式の分母に置くことはしません。ピークを受け持てる容量と、日常の稼働状況を別々に評価します。

力率改善は設置位置まで確認する

進相コンデンサで変圧器を流れる無効電力が減れば、その変圧器の電流低減につながります。ただし高圧母線側で補償するだけでは、下流の変圧器内を流れる負荷の無効電流まで減るとは限りません。受電点の力率と変圧器二次側負荷の力率を区別します。

インバーター等の高調波による波形ひずみも、コンデンサの追加だけでは解消しません。過補償、共振、投入段数、直列リアクトル等の検討は高調波対策の設計とあわせて確認してください。

受電方式・バンク構成・設置条件を決める

受電方式は、変圧器の合計kVAだけで確定するものではありません。東北電力の契約プランでは、高圧を契約電力50kW以上2,000kW未満、特別高圧を2,000kW以上の区分で案内しています。地域・契約条件・供給設備による取扱いを踏まえ、一般送配電事業者等と供給電圧、引込ルート、将来増設を協議します。

電灯用単相と動力用三相など、必要な電気方式に応じてバンクを分けます。複数台に分割しただけで予備機能を持つわけではありません。並列運転の可否、切替回路、1台停止時に残す負荷、保護協調を定めます。構成の全体像は受変電設備の基本、系統整理は単線結線図の読み方を参照してください。

油入式・モールド式は、設置環境、火災対策、騒音、冷却、保守、質量を比較して選びます。モールド式も一律に「不燃」と扱わず、製品の難燃性・耐環境性と採用条件を確認します。

電気室の面積と換気は機器仕様から決める

必要面積は容量に一定の面積係数を掛けるだけでは確定しません。盤の外形、扉の開閉、操作・点検距離、搬入・更新経路、ケーブルの曲げと立上げ、床荷重、浸水対策を配置図で確認します。浸水を受けやすい地下への設置を前提にせず、立地の災害条件と運用継続性から設置階を検討します。

三菱電機の変圧器損失の説明では、無負荷損と、負荷電流の2乗に比例する負荷損を区別しています。換気負荷はメーカーの損失データと想定運転条件から求め、他の盤の発熱も合算します。「変圧器容量の何%」だけで放熱量を決めないようにします。

容量・スペース概算ツールの使い方

受変電設備の容量・スペース計算ツールは、用途と延床面積から基本計画の条件を試算するものです。事務所5,000m²、需要率70%、力率90%、将来余裕20%の表示例では、負荷密度80VA/m²、必要容量336kVA、選定容量500kVA、設置所要面積約32m²となります。

この原単位はVA/m²なので、面積との積400kVAに需要率を適用すると280kVA、20%増しで336kVAです。対応する有効電力の目安は280×0.90=252kWとなります。画面の「概算契約電力」は契約を確定する値ではありません。面数・寸法・保守空間はツール独自の仮定であり、負荷表からの選定やメーカー配置図との照合を行います。

容量計算の確認リスト

  • 電気入力・軸出力、kW・kVA、原単位の対象負荷を区別したか。
  • 需要率・不等率の根拠と集計範囲を残したか。
  • 負荷率LFと容量使用割合kを区別し、将来余裕を二重計上していないか。
  • バンクごとの始動条件・高調波・停電時の運用を確認したか。
  • 機器の損失、設置寸法、点検・更新経路を確認したか。
  • 決定した設計電流を幹線設計・電圧降下計算と整合させたか。

参考資料

資料・ツール表示確認日:2026年9月11日。計算例は明記した仮定による当サイトの試算です。実案件の需要率や選定容量を示すものではありません。

監修者

猪

猪狩理

設備設計士

パラダイム部長