ダクト設計が空調品質を左右する理由
ダクト設計は、空調機で処理した空気を各室の吹出口まで適切に搬送する経路計画であり、空調システムの品質を大きく左右します。ダクトサイズが小さすぎれば風速上昇による騒音と圧損増大を招き、大きすぎれば天井内納まりを圧迫しコストも嵩みます。さらに送風機の選定容量や運転動力にも直結するため、ライフサイクルコストにも影響します。本記事では、等圧法・等速法によるサイズ決定と圧損計算の基本、材質・形状の選び方、実務上の注意点を一通り整理します。
ダクトサイズ決定の2つの手法
ダクトサイズの決定手法には、実務で広く用いられる等圧法(等摩擦損失法)と等速法の2つがあります。それぞれの考え方と適用範囲を理解したうえで、状況に応じて使い分けることが重要です。
等圧法(等摩擦損失法)
等圧法は、ダクト単位長さあたりの摩擦損失を一定に保つようにダクトサイズを決定する手法です。一般的な設計基準は、低騒音空間(会議室・客室・診察室など)で0.8 Pa/m以下、一般オフィス・商業空間で1.0〜1.2 Pa/m、工場・倉庫・機械室で1.5 Pa/m程度です。計算が簡便で空調設計実務で最も広く使われる手法ですが、エルボ・分岐・ダンパーなどの局所損失は別途計算する必要があります。
等速法
等速法は、ダクト内の風速を一定に保つようにサイズを決定する手法です。経路ごとの目安風速は、主ダクトで5〜8 m/s、枝ダクトで3〜5 m/s、吹出口接続ダクトで2〜3 m/s程度です。風速を直接コントロールするため騒音管理がしやすく、風量分岐の多い系統や精密な気流制御が必要な空間に適しています。
実務での使い分け
実務では、等圧法でダクトサイズを決定したうえで、各区間の風速が許容値を超えていないかをチェックする「等圧法+風速確認」のハイブリッド運用が一般的です。低騒音が強く要求される系統や、厨房排気のような特殊系統では、等速法主体での設計が有効になります。
圧損計算の基本構造
ダクト全系統の圧力損失は、摩擦損失と局所損失の合計です。送風機の必要静圧は、最も圧損が大きい経路(最遠端経路)の総圧損として評価します。
摩擦損失(直線部)
摩擦損失はダクト直線部で発生する損失で、ダクト径・風速・ダクト長さ・内面粗度によって決まります。設計実務では摩擦損失線図またはダクトサイザーソフトで算出するのが一般的です。等圧法で設定した単位摩擦損失(Pa/m)にダクト長さを掛けることで、直線部の総損失が求まります。
局所損失(エルボ・分岐・ダンパー)
局所損失は、エルボ・分岐・合流・拡大・縮小・ダンパー・吹出口など、流れが乱れる部位で発生します。各部位の局所損失係数(ζ)に動圧(½ρv²)を掛けて算出します。代表的な係数の目安は、90°エルボ(R/D=1〜1.5)で0.2〜0.5、90°分岐で0.1〜1.0、風量調整ダンパーで0.5〜5.0(開度依存)、防火ダンパーで0.3〜1.0程度です。ダンパー類は開度・形式によって係数が大きく変動するため、メーカー資料の確認が必要です。
系統全体の圧損 — 最遠端経路での評価
ダクト系統の必要静圧は、空調機から最も遠い吹出口までの経路(最遠端経路)の総圧損として算出します。これに空調機内部の機内静圧と外部抵抗(吹出口・吸込口・フィルター等)を加えたものが、送風機の必要静圧となります。実務上は10〜20%程度の安全率を見込むのが一般的です。
ダクト材質と形状の選定
材質の選び分け
一般空調では亜鉛めっき鋼板(GIダクト)が標準です。厨房排気や湿気の多い排気にはステンレス鋼(SUS304等)、屋外露出部には塗装鋼板またはステンレス、粉じん・腐食性ガス搬送には用途専用ダクト(ガラス繊維強化樹脂等)を使い分けます。用途と腐食環境に応じて材質を選定することで、長期の耐久性と保守性を確保できます。
形状とアスペクト比
円形ダクトは圧損が最も小さく、強度・コスト面でも有利ですが、天井内の納まりから角形(矩形)ダクトを採用するケースも多くあります。角形ダクトのアスペクト比(長辺:短辺)は2:1程度を理想とし、4:1以下を目安とします。アスペクト比が大きくなると圧損増加・剛性低下・板厚増による重量増を招くため、納まりとのバランスで決定します。
フレキシブルダクトの使用範囲
フレキシブルダクト(たわみダクト)は、空調機との接続部の振動吸収や吹出口直前の最終接続に限定的に使用します。長距離での使用は圧損増大を招くため、原則として吹出口接続部の1〜2m程度に留めます。火気使用室の排気・排煙ダクト・厨房排気には使用できない点に注意が必要です。
実務上の注意点
天井内スペースと意匠調整
ダクトサイズは天井内納まりに直結するため、基本設計段階での意匠・構造設計との調整が不可欠です。梁下を通過する箇所ではダクト高さが制約され、幅広の扁平ダクトやルート変更を要する場合があります。天井高さや梁伏図を早期に共有し、ダクトルートと点検口位置を含めて合意形成しておきましょう。
断熱処理と結露防止
冷風ダクトには、天井内の湿気が表面で結露するのを防ぐため、グラスウール25mm以上または同等の断熱材による処理が必要です。引き渡し後の天井染み・カビは、断熱不良や保温抜けに起因することが多く、特にフランジ・ダンパー・支持金物まわりの納まりに注意が必要です。
防火区画貫通と防火ダンパー
ダクトが防火区画を貫通する場合は防火ダンパーの設置が必要です。火災時に温度ヒューズ等で自動閉鎖する構造とし、関連設備(空調停止信号・排煙設備)との連動を確認します。点検口の位置・寸法、貫通部のモルタル詰めなどの防火措置も含めて設計図面に反映します。
ダクト設計チェックリスト
設計レビュー時に確認すべき主要項目を整理しました。図面・計算書のチェックポイントとして活用してください。
□ ダクトサイズが設定した単位摩擦損失(Pa/m)を満たしているか
□ 各区間の風速が許容値を超えていないか(主:5〜8、枝:3〜5、接続:2〜3 m/s)
□ 角形ダクトのアスペクト比が4:1以下に収まっているか
□ 最遠端経路で系統全体の圧損が算出されているか
□ 送風機必要静圧に適切な安全率(10〜20%)を見込んでいるか
□ 冷風ダクトの断熱仕様が結露防止に適切か(グラスウール25mm以上)
□ 防火区画貫通部に防火ダンパーが計画されているか
□ フレキシブルダクトの使用箇所・長さが適切か(吹出口接続部1〜2m程度)
□ 天井内納まり・梁との干渉が意匠側と確認済みか
□ 点検口・ダンパー操作スペースが確保されているか
まとめ
ダクト設計は、等圧法・等速法によるサイズ決定と、摩擦損失・局所損失を合算する圧損計算が基本です。これに材質・形状の選定、断熱処理、防火対策、意匠との納まり調整など実務上の論点が絡みます。設計初期から意匠・構造設計と連携し、最遠端経路での圧損評価とチェックリストを確実に押さえることで、品質の高いダクト設計が実現できます。当ポータルの圧損計算シミュレーションツールもぜひご活用ください。
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



