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空気線図(h-x線図)の読み方と実務活用ガイド|各軸の意味・空調プロセス・送風量算出を徹底解説

空気線図(h-x線図)の読み方と実務での使い方を徹底解説。縦軸(比エンタルピー)・横軸(絶対湿度)・各線の意味、状態点の求め方、冷房・暖房・加湿・混合プロセスの読み取り、送風量・コイル能力・加湿量の算出まで、建築設備設計者向けに網羅的に紹介します。

空気線図(h-x線図)の読み方と実務活用ガイド|各軸の意味・空調プロセス・送風量算出を徹底解説
hvac
公開日
2026年4月23日
更新日
2026年4月24日

空気線図(h-x線図)とは

空気線図(h-x線図、または湿り空気線図)とは、湿り空気の状態(温度・湿度・エンタルピー)を1枚の図上に表現するツールです。空調設計における最も基本的かつ重要なツールであり、冷房・暖房・加湿・除湿の各プロセスを視覚的に理解し、必要な空調能力や送風量を算出するために使用します。

空気線図を使いこなすことで、空調設計の精度とスピードが大幅に向上します。本記事では、h-x線図の各軸・線の意味から、空調プロセスの読み取り方、送風量・コイル能力・加湿量の算出まで、建築設備設計者に必要な実務知識を網羅的に解説します。

h-x線図の軸と線の読み方

縦軸:比エンタルピー(h)

縦軸の比エンタルピー(h)は、乾き空気1kgあたりの全熱量(顮熱+潜熱)を表し、単位はkJ/kg(DA)です。エンタルピーは空気が持つ熱エネルギーの総量を示し、空調負荷の計算に直接使用されます。

横軸:絶対湿度(x)

横軸の絶対湿度(x)は、乾き空気1kgあたりに含まれる水蒸気の質量を表し、単位はkg/kg(DA)またはg/kg(DA)です。相対湿度(%RH)と異なり、温度に依存しないため、加湿・除湿の計算に直接使用できます。

図上の主な線

h-x線図上には、以下の主要な線が描かれています。

  • 乾球温度線:縦の等間隔線。通常の温度計で測る温度で、空調設計で最も基本的なパラメータ
  • 相対湿度線:曲線で表示。飽和線(100%RH)が最も外側(左上)に位置し、内側に向かって%が下がる。室内環境の快適性評価に重要
  • 湿球温度線:比エンタルピー線とほぼ平行に走る斜めの線。気化式加湿や冷却塔の設計で重要。断熱飽和過程を表す
  • 露点温度:ある状態点から絶対湿度一定のまま左に移動し、飽和線と交わる点の温度。結露判定やデシカント設計に使用

空気線図上の状態点の求め方

空気の状態点は、2つの独立した物理量がわかれば、h-x線図上の1点として決定できます。代表的な組み合わせは以下のとおりです。

  • 乾球温度+相対湿度:最も一般的な組み合わせ。室内設計条件(例:26℃・50%RH)をプロットする場合など
  • 乾球温度+湿球温度:外気条件のプロットに多用。気象データから取得できる値
  • 乾球温度+絶対湿度:加湿・除湿の前後で絶対湿度が分かっている場合に使用
  • 乾球温度+エンタルピー:コイル出口の状態など、エンタルピーが既知の場合に使用

空調プロセスの読み取り

空調の各プロセスは、h-x線図上の状態点の移動(状態変化)として表現できます。

冷房(除湿冷房)プロセス

冷房(除湿冷房)では、状態点が左下に移動します。温度(乾球温度)と絶対湿度がともに低下し、コイルでの冷却除湿を表します。コイルの表面温度が露点温度以下になると空気中の水蒸気が凝縮し、除湿が行われます。エンタルピー差が冷房能力(全熱)、絶対湿度差が潜熱処理量に対応します。

暖房プロセス

暖房では、絶対湿度一定のまま右上に移動します。温度が上昇し、相対湿度が低下します。これが冬季に暖房のみで加湿しない場合に室内が乾燥する原因です。エンタルピー差が暖房能力(顮熱)に対応します。

加湿プロセス

加湿の方式によって、状態点の移動方向が異なります。

  • 蒸気加湿:温度がほぼ一定のまま絶対湿度が上昇(右方向に移動)。精密な湿度制御が可能で、クリーンルームや美術館等で採用
  • 気化式加湿:湿球温度線に沿って移動し、絶対湿度は上昇するが温度が下がる。エネルギー消費が少なくランニングコストが低いが、湿度の精密制御は困難

外気と還気の混合

外気と還気(室内循環空気)の混合は、2点を結ぶ直線上の、風量比に応じた点として表現されます。例えば外気導入率30%の場合、混合点は外気点と還気点を結ぶ線分を3:7に内分した位置になります。この混合点がコイル入口の状態となり、コイル能力の計算に使用します。

実務での活用例

送風量の算出

室内設計点と吹出空気の状態点からエンタルピー差を求め、以下の式で送風量を算出します。

送風量(kg/h)= 空調負荷(kW)÷ エンタルピー差(kJ/kg)× 3,600

エンタルピー差が大きいほど送風量を小さくでき、ダクトサイズやファン動力の削減につながります。

コイル能力の確認

混合点(外気と還気の混合状態)から吹出点までのエンタルピー差×送風量でコイルの必要能力を確認します。全熱能力だけでなく、顮熱比(SHF)も確認することで、コイルの特性との整合性を検証できます。

加湿量の算出

加湿前後の絶対湿度差×送風量で必要な加湿量(kg/h)を算出します。加湿器の容量選定や、加湿に伴うエネルギー消費の算出に使用します。

全熱交換器の効果確認

外気と排気のエンタルピー差から、全熱交換器によるエネルギー回収量を確認できます。全熱交換器を通過した後の外気状態を空気線図上にプロットすることで、コイル入口条件の緩和効果を視覚的に把握できます。

設計時のよくある失敗と対策

空気線図の活用で起こりがちな失敗事例と、その対策を紹介します。

  • 全熱と顮熱の混同:エンタルピー差(全熱)と温度差(顮熱)を混同して計算するケース。冷房では潜熱分も含めた全熱での計算が必要
  • 外気負荷の過小評価:混合点を正しくプロットせず、外気負荷を過小評価するケース。外気導入量と外気条件を正確に把握し、混合点を確実にプロットする
  • 加湿方式による線図上の動きの誤解:蒸気加湿と気化式加湿で線図上の移動方向が異なることを理解せず、加湿後の状態を誤るケース。加湿方式ごとの状態変化を正しく理解する
  • SHF(顮熱比)の未確認:コイルのSHFと室内のSHFが一致しない場合、設計条件を満たせない。空気線図上でSHF線を引き、コイル特性との整合を確認する
  • 露点温度の未確認による結露:空気線図で露点温度を確認せず、ダクトや配管表面で結露が発生するケース。吹出空気の露点を確認し、結露リスクのある部分には保温を施工

まとめ

空気線図(h-x線図)は、空調設計の精度とスピードを向上させる基本ツールです。本記事のポイントを整理すると、以下のとおりです。

  • 縦軸(比エンタルピー)・横軸(絶対湿度)・乾球温度線・相対湿度線・湿球温度線・露点の意味を正しく理解する
  • 冷房・暖房・加湿・混合の各プロセスの状態変化を線図上で正確に読み取る
  • 送風量・コイル能力・加湿量の算出にエンタルピー差・絶対湿度差を活用する
  • 全熱と顮熱を区別し、SHF(顮熱比)も含めてコイル特性との整合を確認する
  • 露点温度を確認し、結露リスクのある箇所には保温対策を行う

空気線図を使いこなすことは、空調設計者にとって最も基本的かつ重要なスキルです。本記事で解説した内容を実務に活かし、設計の精度とスピードを向上させてください。

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