空気線図は、温度と湿度などから空気の状態を求め、加熱・冷却・加湿・混合の変化を確認する図です。最初に、線図の気圧条件、温度範囲、単位、各目盛の位置を確認します。h-x線図、i-x線図などの名称だけで縦軸・横軸を決めつけないことが大切です。
ここでは標準大気圧101.325kPaを想定し、乾球温度を横方向、絶対湿度を縦方向に読む形式で説明します。別の向きの線図を使う場合は、以下の「右・左」をそのまま当てはめず、一定となる物性値を追ってください。
先に覚える6つの値
物性値 | 意味 | 主な単位 |
|---|---|---|
乾球温度 t | 通常の温度計で測る温度 | ℃ |
相対湿度 φ | その温度の飽和状態に対する水蒸気分圧の割合 | %RH |
絶対湿度 x(湿度比) | 乾き空気1kg当たりの水蒸気量 | kg/kg(DA)、g/kg(DA) |
比エンタルピー h | 乾き空気1kgを基準とする湿り空気の熱量 | kJ/kg(DA) |
露点温度 | 水蒸気量を変えず冷やしたとき飽和する温度 | ℃ |
比容積 v | 乾き空気1kg当たりの湿り空気の体積 | m³/kg(DA) |
DAはdry air(乾き空気)の意味です。g/kgとkg/kgでは1,000倍の違いがあります。また、ここでいう絶対湿度は体積当たりの水蒸気量g/m³ではありません。
状態点と露点を読む手順
- 線図の気圧と単位を確認する。
- 乾球温度の線と相対湿度の曲線の交点を探す。
- 同じ状態点から絶対湿度、エンタルピー、比容積を読む。
- 絶対湿度一定の線を飽和曲線までたどり、露点温度を読む。
例えば26℃・50%RH・標準大気圧では、絶対湿度はおよそ10.5g/kg(DA)、エンタルピーは約53kJ/kg(DA)、露点は約15℃です。図の分解能や計算法で丸め差があるため、設計で必要な精度に応じて計算ツールと照合します。
線図の種類と読み取りの基礎はASHRAE Handbook「Psychrometrics」で確認できます。高地などで気圧が異なる場合は、標準大気圧用の線図をそのまま使わないでください。
加熱・冷却・加湿の模式図
次の表は、横方向を温度、縦方向を絶対湿度として状態変化を示す模式図です。数値を読み取るための実寸の空気線図ではありません。
絶対湿度の変化 | 温度が下がる ← | 温度がほぼ一定 | → 温度が上がる |
|---|---|---|---|
増える ↑ | 気化式加湿:左上へ | 蒸気加湿:主に上へ | 加熱と加湿の組合せ |
一定 | 顕熱冷却:左へ | 基準の状態点 | 顕熱加熱:右へ |
減る ↓ | 冷却除湿:左下へ | 方式・処理条件を確認 | 吸着式除湿等:条件により右下へ |
冷却しても露点に達するまでは、原則として絶対湿度は変わりません。露点以下の冷却面で水分が凝縮すると、温度と絶対湿度が下がります。顕熱加熱では絶対湿度は変わらず、相対湿度が下がります。
蒸気加湿では蒸気の状態によって温度も変わるため、「必ず等温」とは扱いません。気化式加湿は、断熱的な条件では概ね等エンタルピーの方向を検討します。方式の比較は加湿・除湿設備の設計を参照してください。
外気と還気の混合は乾き空気質量で計算する
熱の出入りや凝縮を無視できる混合では、乾き空気質量の比でエンタルピーと絶対湿度を平均します。体積風量の比を使うときは、外気と還気の比容積の違いを確認します。
計算例として、外気をh=70kJ/kg(DA)、x=0.018kg/kg(DA)、還気をh=50、x=0.010と仮定します。乾き空気質量で外気30%、還気70%なら、混合後はh=0.3×70+0.7×50=56、x=0.3×0.018+0.7×0.010=0.0124です。
外気(30%)+還気(70%)→ 混合点M[h=56、x=0.0124]→ 冷却コイル → 吹出点S
温度・相対湿度は、求めたhとxの交点から確認します。相対湿度の数値を単純に平均する方法は使いません。空調負荷と外気処理の境界は全熱交換器と外気処理の選定と合わせて整理します。
コイル能力・除湿量の計算例
前節の混合点Mから、吹出点Sをh=35kJ/kg(DA)、x=0.008kg/kg(DA)とする仮定例を考えます。乾き空気質量流量Gを1.0kg(DA)/sとすると、以下の計算になります。
- コイル全熱処理能力:G×(hM−hS)=1.0×(56−35)=21kW。
- 除湿量:G×(xM−xS)×3,600=1.0×0.0044×3,600=15.84kg/h。
- 比容積を0.85m³/kg(DA)と仮定した体積風量:G×v×3,600=3,060m³/h。
質量流量がkg/hなら、能力計算では3,600で割ります。kg/sならkJ/sがそのままkWです。実機の選定ではコイルの能力条件、顕熱・潜熱の内訳、バイパス、送風機発熱等を確認します。室内負荷だけから求めた能力と、外気を混合したコイル負荷を混同しないでください。
実務で間違えやすい点
- 線図の目盛の向きと、本文の左右・上下が一致していない。
- 相対湿度の低下を、そのまま除湿と判断する。
- 絶対湿度のgとkg、質量流量と体積風量を混在させる。
- 全熱負荷だけで吹出条件を決め、顕熱・潜熱の整合を確認しない。
- 結露を、冷気側の露点だけで判断する。
配管やダクトの表面結露は、その表面に接する周囲空気の露点と表面温度を比較します。具体的な確認は空調設備の結露対策を参照してください。計算条件や設備仕様の整理については、空調設備の設計相談をご利用いただけます。



