設備設計ナレッジ

高調波とは?発生原因・影響・対策と等価容量/流出電流の計算例

高調波の発生原因と機器への影響を整理し、等価容量による一次判定と次数別流出電流の判定を計算例で解説。対策工法の違いと、メーカー資料・設計図で確認する項目をまとめます。

高調波対策の設計|発生原因・影響・5つの対策工法・ガイドライン適合確認の全手順
electrical
公開日
2026年4月8日
更新日
2026年9月16日

高調波とは、基本周波数の整数倍の周波数を持つ成分です。電気設備で扱う商用電源が50Hzなら、第3次は150Hz、第5次は250Hzになります。非線形負荷がひずんだ電流を流すと、系統のインピーダンスを介して電圧波形にも影響します。

設計では、建物内の機器への影響と、受電点から外部系統へ流出する電流を分けて検討します。この記事では発生原因、対策工法、等価容量と高調波流出電流の判定を、記入例とともに整理します。

高調波はなぜ発生するのか

抵抗負荷の電流が電圧と同じような波形になるのに対し、整流回路などは電圧の一部の区間に電流を集中して引き込みます。そのひずみ波を、基本波と複数の高調波に分けて考えます。参考:日本電気技術者協会「電圧・電流波形のいろいろ(2)」

次数

50Hz系統

60Hz系統

基本波

50Hz

60Hz

第3次

150Hz

180Hz

第5次

250Hz

300Hz

第7次

350Hz

420Hz

波形の考え方は「基本波+第3次+第5次+…=実際の波形」です。各成分の大きさと位相が異なれば、同じ総合ひずみ率でも波形は異なります。次数別の評価に、総合ひずみ率の数値をそのまま代用しないようにします。

設備名称だけで発生量を決めない

インバーター空調機、ポンプ用インバーター、UPS、LED電源、充電設備などを洗い出します。ただし発生量は整流方式、リアクトル、補償回路、負荷率等で変わります。「空調が必ず最大」「LEDだから対策が必要」と決めつけず、採用品の資料で確認してください。

主な影響と確認する場所

懸念

確認する内容

変圧器・導体の発熱

実効電流、次数別成分、負荷条件と温度上昇

コンデンサ・リアクトルへの負担

系統との共振、流入する高調波、機器の許容条件

制御機器への影響

電圧波形、発生時刻、機器動作との対応

中性線の電流

系統方式、負荷の偏り、第3次等の成分

外部系統への流出

受電点の次数別電流とガイドライン上限値

高調波によるトラブルでは、発生機器だけでなく、系統構成や進相コンデンサの運転状態も調査対象になります。参考:日本電気技術者協会「高調波対策の考え方・検討経緯・留意事項」

第3次高調波と中性線:三相4線式での注意

三相4線式の相-中性線間に同種の単相非線形負荷を接続した場合、第3次などの成分は中性線で相殺されず、加算されることがあります。各相の第3次成分が同位相で10Aなら、中性線の第3次成分は30Aになる、という考え方です。これは基本波等を含む中性線実効電流そのものを30Aと断定する例ではありません。出典:Schneider Electric「A high 3rd harmonic current can cause a high neutral current」

この説明を単相3線式へそのまま転用したり、中性線電流を一律に相線電流の√3倍と置いたりしません。系統と負荷の波形を確認して、導体の許容電流・保護方法を検討します。

ガイドラインの確認は2段階で進める

高圧・特別高圧需要家で高調波発生機器を新設・増設・更新する場合などは、該当する一般送配電事業者の手続きと計算書を確認します。東京電力パワーグリッドでは、計算書の提出と、流出電流が上限を超える場合の対策を案内しています。出典:東京電力パワーグリッド「高調波流出電流計算書の提出」

第1段階:等価容量の合計を確認する

等価容量P0は、対象機器の定格容量Piに回路種別の換算係数Kiを乗じて合計します。基本形はP0=Σ(Ki×Pi)です。Piの取り方は機器資料で確認し、モーターの軸出力kWを無条件に入力kVAとして使わないでください。参考:三菱電機「高調波抑制ガイドラインに関わる定格容量」

受電電圧

等価容量の限度値

6.6kV

50kVA

22/33kV

300kVA

66kV以上

2,000kVA

この段階は受電電圧に対応する等価容量との比較です。契約電力に係数を掛ける次数別電流の上限計算とは区別します。限度値を超えたことだけで、フィルタの設置を確定するわけではありません。適用する判定フローに沿って次段階へ進みます。出典:三菱電機「高調波対策機器」第2章

等価容量の計算例

以下は算式を説明する架空の条件です。係数は特定製品の推奨値ではなく、実案件では採用品の回路分類と資料で確定してください。

機器群

合計定格容量Pi

換算係数Ki(仮定)

Ki×Pi

A

40kVA

1.0

40kVA

B

60kVA

0.5

30kVA

合計

100kVA

—

70kVA

6.6kV受電なら70kVAは50kVAを超えます。ここで得られる結論は、適用フローに沿った追加検討が必要ということです。「20kVA超過したので20kVAのフィルタ」とは選定できません。

第2段階:次数別の流出電流を比較する

機器の次数別発生電流、台数、最大稼働率、適用できる補正や低減効果などを、指定された計算方法で集計します。上限値は受電電圧・次数ごとの係数と契約電力から求めます。メーカー値が1台当たりか、受電電圧換算済みか、AかmAかを確認してください。

例として、6.6kV・契約電力500kWの第5次上限を3.5mA/kWで計算すると、1,750mA=1.75Aです。計算済み流出電流を仮に2.20Aとすれば0.45A超過するため、この次数の低減検討が必要です。他の次数も別々に確認します。この差は、そのまま購入するフィルタの定格電流を示しません。参考:三菱電機「高調波対策機器」表2-2

対策工法は目的で使い分ける

工法

主な目的

選定時の確認

入力リアクトル・直流リアクトル

発生機器側で電流波形を改善する

採用回路と係数・発生率、電圧降下

低高調波変換装置・多パルス化

発生量を抑える

適用機器、電源条件、負荷率別性能

アクティブフィルタ

補償電流で高調波を低減する

対象次数、負荷変動、検出位置、容量と制御範囲

同調型のパッシブフィルタ

所定の次数に対する低減経路を設ける

共振、系統変化、他系統からの流入

変圧器・中性線の熱的設計

高調波がある状態での発熱に対応する

波形・負荷に対する定格と許容電流

進相コンデンサの直列リアクトルと、特定次数を吸収する同調フィルタを同一視しないでください。また、高調波に耐える変圧器や導体を選ぶことは、流出電流を減らす対策とは目的が異なります。用途名だけでK値や工法を固定せず、メーカーへ計算条件を提示して確認します。参考:日本電気技術者協会の対策・留意事項

設計と引渡しのチェックリスト

  • 機器一覧に、型式、回路分類、定格容量、係数、次数別データの出典を記入した。
  • 等価容量の判定と、次数別流出電流の判定を別の欄にした。
  • 最大稼働率や補正係数の適用根拠を残し、同じ低減効果を重複計上していない。
  • 対策後の計算条件を、発注するリアクトル・フィルタ・機器仕様に反映した。
  • 中性線は系統方式と負荷に基づいて検討し、実効電流・温度を確認する計画にした。
  • 竣工測定では、測定点、負荷運転状態、コンデンサ・フィルタの状態を記録する。
  • 将来の空調・UPS・充電設備の増設時に再計算する担当と資料保存先を決めた。

受電点や対策機器の接続関係は単線結線図にまとめます。非常用発電機運転時も使う負荷については、商用系統とは電源条件が変わるため、発電設備の容量・負荷投入条件と合わせて確認してください。

監修者

猪

猪狩理

設備設計士

パラダイム部長