設備設計ナレッジ

弱電・情報通信設備の設計|LAN・無線AP・電源・配線ルートの計画手順

弱電・情報通信設備の範囲と設計手順を、利用者・端末・通信要件から整理。LAN配線、無線AP、PoE、ラックの電源・放熱、工事区分を確認する表を使い、建築設備とネットワーク計画をつなげます。

弱電・情報通信設備の設計入門|LAN配線・MDF/IDF・無線AP・サーバー室の計画手順
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公開日
2026年4月6日
更新日
2026年9月27日

弱電・情報通信設備の設計は、LANの口数を決めるだけでは完了しません。利用するサービス、端末数、通信品質、給電、設置場所、管理方法を整理し、建築・電気・空調・ネットワークの担当者で条件を合わせます。

弱電設備の範囲と「低圧」との違い

建築設備でいう弱電は、情報伝送・通信・監視・制御などの設備をまとめる実務上の呼び方です。電気設備の法令上の電圧区分である「低圧」と同じ意味ではありません。設備の種類によって適用法規や必要な資格・施工条件も異なります。

設備

計画する内容

LAN・電話

有線端末、幹線、通信事業者の引込み、配線盤

無線LAN

利用範囲、同時利用台数、電波環境、AP給電

監視カメラ・入退室管理

通信・電源、記録、管理権限、停止時の動作

放送・インターホン

音声到達範囲、呼出し先、非常時の連携

自動火災報知等

消防設備としての基準と専用の設計・検査

同じ配線ルートを通る場合でも、一般LANと消防設備を同じ条件で扱いません。電気設備全体の位置付けは電気設備設計の全体像で確認できます。

利用条件を要件表にする

最初に、平常時と混雑時の利用者数、端末、用途、許容停止時間、将来増設を整理します。「高速なWi-Fi」といった表現だけでは、必要な設備を判断できません。

確認項目

具体化する内容

端末と利用

PC、会議端末、カメラ、APの台数と同時利用

通信品質

業務アプリ、映像会議、遅延・通信断への要求

電源

AC電源/PoE、停電時の継続対象と時間

運用

管理担当、来訪者用通信、監視・保守、更新周期

将来余裕

予備ポート、配管・ラックスペース、電源容量

例えば会議室は、席数だけでなく一人が複数端末を使う条件や映像会議の同時実施を確認します。セキュリティやネットワークの設定は運用担当と決め、建築設備図だけで確定しないようにします。

LAN配線とMDF・IDFの配置を決める

通信事業者の引込みから各階・各室の端末までを系統図でつなぎ、銅配線と光配線の役割を整理します。カテゴリは必要な速度・距離・PoE・施工環境から選び、すべてを一律にCat6Aとする前に要求条件を確認します。

ケーブルだけが高性能でも、コネクタやパッチコード、施工品質が対応していなければ、配線システム全体の性能は成立しません。引渡し時に何を測定し、どの規格で合否を確認するかも仕様に含めます。

MDF・IDFの役割や配置、盤の工事区分はMDF・IDFの設計チェックリストで詳しく扱っています。本記事では、機器の置き場を決める前に、系統・端末・配線ルートの要件をそろえることを重視します。

無線APは面積だけで台数を決めない

無線APの配置は、電波が届く範囲と、同時利用時に必要な通信容量の両方で検討します。壁材、金属棚、家具、天井高さ、周辺電波、利用する端末によって条件が変わるため、「何m²に1台」という目安だけでは確定できません。

設計時に図面上の予測と設置位置を検討し、現地調査・完成後の測定で確認します。APを増やしても、チャネルや出力の設定が不適切なら干渉が増えることがあります。点検や位置変更ができる設置方法と、配線の到達性も確保してください。

PoE・UPS・ラックの放熱を照合する

PoEは通信ケーブルで端末へ給電する方式です。スイッチのポート数だけでなく、一つのポートの給電能力と装置全体の給電予算、端末が必要とする規格を確認します。電源が不足すると、接続できても機能が制限される機器があります。

ラックへのAC入力はスイッチ本体とPoE端末への給電を含めて整理します。一方、ラックの室内放熱を評価するときは、遠隔の端末で消費される電力までラック内の熱として二重計上しないよう、メーカー値の定義を確認します。UPSは継続対象の負荷と必要時間で選び、ネットワーク上流の停止条件も確認します。

必要なコンセントと回路はコンセント・配線計画へ反映します。サーバーやスイッチを置く室は、夜間・休日も含めた空調運転と漏水リスクを検討します。

工事区分と引渡し確認を残す

  • ラック、配線、パッチコード、機器、設定、試験の担当を明記する。
  • 電源・空調・防火区画貫通・接地等を各担当と調整する。
  • 回線開通と機器設定の工程を建築工事の工程へ反映する。
  • ポート番号、配線試験記録、無線測定、完成系統図を引き継ぐ。

参考:Cisco「Wireless Access Point Deployment Guide」。特定製品の採用推奨ではなく、機種ごとの給電条件と現地調査の確認資料として参照しています。

監修者

猪

猪狩理

設備設計士

パラダイム部長