必要換気量は「何を薄めるか」と「適用する基準」で決める
必要換気量は、室内の汚染物質や臭気などを排出・希釈するために必要な外気量です。通常はm³/h(1時間当たりの空気量)で表します。室の面積だけで決めず、人数、天井高、活動量、発生する汚染物質と法令上の要件を確認します。
CO₂濃度で求める場合は「発生量÷室内外の濃度差」、換気回数で求める場合は「床面積×天井高×換気回数」が基本です。同じ部屋でも算定目的が違うため、計算結果が同じになるとは限りません。
必要換気量の計算方法を比較
方法 | 基本式・考え方 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
CO₂濃度から計算 | Q=G×1,000,000/(Ci−Co) | 全員分のCO₂発生量、室内目標・外気濃度、均一混合・定常状態の仮定 |
人数から概算 | Q=人数×1人当たり外気量 | 採用する原単位の出典と活動量。30m³/h・人を一律の法定値としない |
換気回数から計算 | Q=床面積×天井高×換気回数 | 室用途と目的に合う換気回数。人数による換気量との違い |
居室の機械換気の法令確認 | 施行令第20条の2の算定式・適用条件を確認 | 床面積、有効開口部、1人当たり占有面積等 |
火気使用室・厨房 | 燃焼機器・排気フード等に対応する方法で別途算定 | 燃焼廃ガス、熱・水蒸気・油煙の捕集、給気経路 |
Qは外気量(m³/h)、Gは室内全体のCO₂発生量(m³/h)、Ci・Coは室内目標・外気のCO₂濃度(ppm)です。CO₂による計算の考え方は北海道立総合研究機構の換気資料などでも説明されています。
CO₂濃度から必要換気量を計算する
ppmの換算を忘れない
ppmは体積比の100万分の1です。濃度をppmのまま式に入れる場合は、CO₂発生量を1,000,000倍してから濃度差で割ります。Ci−Coが正であることも確認してください。外気濃度以上に室内濃度を下げることは、外気による希釈だけではできません。
Q=G×1,000,000/(Ci−Co)
G=1人当たり発生量×人数。発生量は年齢・体格・活動量などで変わるため、実際の用途に合う値を採用します。
厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、対象となる特定建築物の空気環境についてCO₂含有率1,000ppm以下を示しています。適用対象や測定・評価方法を伴う管理基準であり、すべての室の換気量を一つの数値で決めるものではありません。ここでは計算例の室内目標を1,000ppmに設定します。
計算例:20人、外気420ppm、室内目標1,000ppm
説明用の仮定として、1人当たりのCO₂発生量を0.018m³/h、在室人数を20人とします。外気420ppmもこの例の入力条件であり、実際の外気濃度は測定や計画条件に応じて設定します。
- 全員分の発生量:G=0.018×20=0.36m³/h
- 室内外の濃度差:1,000−420=580ppm=0.000580
- 必要外気量:Q=0.36/0.000580≒620.7m³/h
この仮定では、約621m³/hが計算上の外気量です。計算は発生量・換気量が一定で、室内が均一に混ざった定常状態を想定しています。実際の室内では換気の偏り、短時間の人数増加、運転制御なども確認します。
1人当たり30m³/hなら必ず1,000ppm以下になる?
同じ例で20人×30=600m³/hとすると、定常濃度はCi=420+0.36/600×1,000,000=1,020ppmです。1人当たり30m³/hという概算値と、目標濃度から逆算する外気量は区別して使います。外気を400ppmと仮定すれば同じ600m³/hで1,000ppmとなるため、前提の違いが結果に表れます。
換気回数から求める方法|床面積×天井高×回数
室容積V=床面積A×天井高h
必要換気量Q=V×換気回数n
床面積120m²、天井高2.8mなら、室容積は336m³です。仮に0.5回/hで計算すると、336×0.5=168m³/h。0.3回/hなら100.8m³/hです。換気回数は1時間に室容積の何倍の空気を通すかを示す指標で、室内の空気がその時間に完全に入れ替わるという意味ではありません。
シックハウス対策の機械換気は、原則として住宅等の居室では0.5回/h以上、その他の居室では0.3回/h以上が基本です。「住宅等」には住宅のほかホテルの客室なども含まれるため、建物を住宅・非住宅という名前だけで二分しないようにします。中央管理方式や例外を含む適用条件は、国土交通省のシックハウス対策資料と施行令第20条の8で確認してください。
上記168m³/hを20人で割ると8.4m³/h・人です。容積に対して0.5回/hを確保していても、人が多ければCO₂に対する外気量は不足し得ます。シックハウス対策と在室者に必要な外気量は、目的を分けて確認します。
20m³/h・人、30m³/h・人、0.5回/hの使い分け
居室の機械換気では、施行令第20条の2に、床面積と1人当たり占有面積による式「V=20Af/N」があります。この式のNは人数ではなく、1人当たり占有面積(m²/人)です。用途に応じたNの上限や、有効開口部の扱いなどがあるため、常に実人数×20だけで法令適合を判定できるわけではありません。式と変数の定義は国土交通省の改正法解説資料(施行令第20条の2の抜粋)でも確認できます。
例として、開口部による面積控除を行わず、Af=120m²、N=6m²/人を適用できる条件なら、20×120/6=400m³/hです。一方、人数原単位30m³/h・人での概算は600m³/h、今回のCO₂目標からの逆算は約621m³/hになります。
120m²・天井高2.8m・20人の計算例 | 外気量 | この例での位置付け |
|---|---|---|
法令式:20×120/6 | 400m³/h | Af・N等の適用条件を確認した場合の計算 |
人数概算:20×30 | 600m³/h | 30m³/h・人を採用した概算 |
容積:120×2.8×0.5 | 168m³/h | 換気回数0.5回/hでの計算 |
CO₂:0.36×1,000,000/580 | 約621m³/h | 外気420ppm・目標1,000ppm・発生量0.018m³/h・人の仮定 |
同じ室・同じ外気経路で満たす要件なら、各計算の適用条件をそろえて比較します。ただし、厨房の局所排気、隣室からの移送空気、別系統の換気などを単純に最大値一つへまとめることはできません。系統ごとの給排気量と用途上の要件を整理します。
換気量・CO₂計算ツールとの照合
換気量・CO₂目安シミュレーションでは、面積・人数・天井高を入力して概算できます。現在の表示条件は、人数×30m³/hと室容積×0.5回/hの大きい方を採用し、屋外420ppm・均一混合の定常モデルでCO₂濃度を推定するものです。
120m²・20人・2.8mでは、人数換気量600m³/h、容積換気量168m³/hとなり、採用する概算値は600m³/hです。CO₂目安が約1,020ppmとなる点も、上の計算例と一致します。ツールは任意の目標CO₂濃度から約621m³/hを逆算した結果ではなく、法令適合や厨房排気まで判定するものでもありません。
火気使用室は燃焼・捕集条件を別途確認する
厨房や湯沸室では、燃焼廃ガスに加え、調理で発生する熱・水蒸気・油煙なども検討します。必要換気量は燃料消費量、理論廃ガス量、フード等の方式に応じて算定し、機器の取扱説明書・適用告示の単位と係数を確認します。人数換気の式をそのまま使わないようにします。
IH機器は燃焼廃ガスを発生させませんが、調理による熱や水蒸気・油煙への対策は残ります。局所排気の捕集範囲と、排気量に見合う給気の経路を一緒に計画します。
計算後は給排気バランスと実風量を確認する
第1種は給気・排気とも機械、第2種は機械給気・自然排気、第3種は自然給気・機械排気です。どの方式でも、給気口から室内を通って排気口へ至る経路と、必要な風量を確保します。臭気のある室から清浄な室へ空気が流れないよう、室間の圧力関係も調整します。
機器のカタログ風量だけで判断せず、ダクト・フード・フィルターなどの抵抗を見込んだ運転点で実風量を確認します。通常のエアコンの循環風量を、そのまま外気量に算入することもできません。必要外気量が決まったら、外気処理と全熱交換器の選定で空調負荷との関係を確認します。
設計チェックリスト
- 対象室の用途、人数・活動量、床面積・天井高をそろえたか。
- CO₂発生量と濃度差の単位を確認し、ppmを換算したか。
- 人数・CO₂・換気回数・法令の各算定を区別したか。
- 居室換気・シックハウス対策・火気使用室の適用条件を確認したか。
- 局所排気と移送空気を含む給排気バランスを確認したか。
- 圧力損失を含む実風量、清掃・保守、運転制御を計画したか。
参考資料
- e-Gov法令検索:建築基準法施行令(第20条の2・第20条の3・第20条の8)
- 厚生労働省:建築物環境衛生管理基準(CO₂濃度と適用対象)
- 国土交通省:建築基準法に基づくシックハウス対策
- 北海道立総合研究機構:北海道の冬季の寒さに配慮した学校の換気方法(CO₂による必要換気量の計算の考え方)
資料・ツール表示の確認日:2026年9月11日。数値例は明記した前提で当サイトが計算したもので、特定の室の設計値を示すものではありません。
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長


