設備モデルをIFCで渡したときに、部材が見えない、位置がずれる、機器の情報が消えるといった問題が起きたら、元データ・出力・受信側の3段階に分けて調べます。「IFCだから情報が落ちる」とまとめるだけでは、改善する設定や担当者を特定できません。
受け渡し前には、相手が何に使うかと、必要な情報を決めておくことが大切です。干渉確認用の参照モデルと、機器表や維持管理に使う情報では、検収項目が異なります。
スキーマ・MVD・属性を区別する
IFCのスキーマはデータの構造を定める仕様です。MVDは特定の交換用途に必要な範囲を定義する考え方で、属性は要素の性質を表す情報です。buildingSMARTは複数のIFC仕様とMVDの資料を公開しています。
新しい版ほど必ず相手のソフトでうまく使えるとは限りません。一方、設備なら必ずIFC2x3と固定するのも適切ではありません。送受信する製品・バージョンの対応と、必要な情報を確認して組み合わせを決めます。
交換前に合意する項目
項目 | 合意する内容 |
|---|---|
利用目的 | 閲覧、干渉、数量、属性確認など受け手の作業 |
形式 | IFCスキーマ、交換用途、両ソフトのバージョン |
位置 | 座標、基準点、単位、階の対応 |
対象 | 分野、工区、部材、保温、保守空間の範囲 |
情報 | 機器番号、系統、能力など必須の項目と単位 |
更新 | 出力頻度、版番号、置換方法、検収担当 |
「すべての属性を渡す」だけでは合否を判定できません。受け手の用途に必要な項目を一覧化し、代表機器で実際の値を照合してください。
症状ごとの切り分け
症状 | 最初に調べる場所 | 次に試すこと |
|---|---|---|
部材がない | 元モデルと出力対象範囲 | 表示・除外設定、部材分類、変換対象を確認 |
位置がずれる | 基準点、単位、階と高さ | 既知の座標・寸法で両モデルを照合 |
形状はあるが情報がない | 属性の入力元と出力設定 | 出力する項目と受信側の表示先を照合 |
数量が違う | 対象部材と集計条件 | 重複、除外、部材分類、単位を確認 |
更新後に二重になる | 旧版の管理と読込方法 | 追加と置換の運用を確認 |
送信側で書き出したIFCを別の確認環境で開ける場合は、そこでも症状を確認します。IFC側に既に欠落があるのか、受信側で表示・解釈できていないのかを分ける手がかりになります。ただし、あるビューアで見えることだけで、すべての受信ソフトの対応を保証するものではありません。
属性の受け渡しでは名前と意味をそろえる
IFCではプロパティセットに情報をまとめられます。どの項目に何の値を入れるかが一致していないと、同じ「能力」でも冷房能力と消費電力が混同されるような問題が生じます。項目名だけでなく、意味、データ型、単位、対象要素を確認してください。
独自パラメータを使う場合は、送信元の項目と出力先、受け手の表示先の対応を記録します。空欄があるときは未入力なのか、未確定なのか、対象外なのかを区別すると、修正依頼が具体的になります。
少量のモデルで受け入れテストをする
- 代表機器、直管、継手、分岐、ダクトなど必要な部材を選ぶ。
- 機器番号や寸法など、照合できる値を入力する。
- 合意した設定で出力し、設定名・版・対象範囲を記録する。
- 受け手が位置、形状、分類、必須属性を確認する。
- 必要な集計や干渉確認など、実際の用途で使う。
- 位置や値を変更した版を送り、差替えと識別を確認する。
検証結果は項目ごとに合格・補正が必要・未対応を記録します。未対応の情報は、機器表など別の成果物で渡すのか、出力設定を変更するのか、納品条件を再協議するのかを決めます。
不具合の報告に含める情報
作成ソフトと版、出力設定、受信ソフトと版、対象要素の識別情報、期待する値、実際の値、画像をまとめます。全体モデルだけを送って調査を依頼するより、再現する最小範囲を示すと原因を共有しやすくなります。機密を含むモデルを外部へ送る場合は、契約上の取扱いも確認してください。
受領を完了とする基準
受領時には、ファイルが開くことに加え、目的に必要な情報と操作がそろっているかを確認します。未確認の要素や情報を残す場合は、その範囲と後続工程への影響を明示します。
受領全体の管理は意匠BIMを設備設計へ受け渡す際の確認、専用連携はRebroとRevitの連携、要求する作成範囲は設備BIMのLODと情報要求で整理しています。
参考資料
制度・製品情報の確認日:2026年9月26日。実案件では申請先の案内と利用する製品バージョンの資料も確認してください。
監修者
長谷川一夫
機械設備設計部
パラダイム部長



